劉 慈欣 「流浪地球」913冊目

「三体」で一世を風靡している劉 慈欣の、こちらは角川から出ている中編集。300ページほどのこの本に6編の壮大なアイデアが詰まっています。ほんとこの人、発想が宇宙級です。難しい科学の本を読んでるような難しさはあちこちにあるけど、SFですから全部ついて行けなくても、そういう箇所は飛ばし読みすればよし。そんな私でも、リアリティを保ちつつぶっ飛んだアイデアを展開するものすごさは十分に感じることができました。

流浪地球・・・地球が流浪するんですよ。そしてこの人の作品にはよく、宇宙規模の孤独を背負う人が登場する。表紙の、地球から発射されている”プラズマの光”のイメージが美しい。

ミクロ紀元・・・こんどはみんなミリ単位まで小さくなる。発想は小さい子みたいなのに、理論武装がすごいからなんだか丸め込まれてしまう・・・!(いい意味で)

呑食者・・・この前日譚が「円」に収録された「詩雲」と解説にあるけど、記憶にない・・・。「詩雲」で私は感想に「スーパーコンピューターのようなものが漢詩を極めようとする話」と書いていて、そこに注目すると確かに関連を見つけるのは難しいな。

呪い5.0・・・タイトルだけで笑える。なんでもかんでもx.0。しかも「呪い」。やっぱりカタストロフィが来るとしても、これはギャグなのでした。

中国太陽・・・人口の太陽を作る、という設定をどう料理するか。だいぶこの人の小説を読んできたので、ドヤ街のようなところで出会った二人の行く末は読めてたけど、人間味もある面白いお話でした。

山・・・この話が一番好きだな。地球に接近した月のような宇宙船の重力で、海の水が高山の高さまで盛り上がったのを”登る”、あるいは泳いでいく。これもまた登場人物の人生をていねいに語っていて、進化した技術の中で同じ人間性がどうそこに適合していくか、面白く読みました。