これは面白かった!すごいですね、この作家。城壁が複雑な職人技で作られていることは知ってたけど、その世界をここまでふくらませて構築するとは。大変読み応えあり、先を急いで読んでしまうエンタメ性もあります。変な比較だけど、最近の中国SFの強豪たち、ケン・リュウとか劉慈欣とかがオリジナルの世界を繰り広げる力量に匹敵するくらいの説得力がありました。この人時代ものしか書かないのかなぁ。近未来SFとかも読んでみたいな。
登場人物の、過去からの積み重ねを経た人物像がしっかり重みを持っていて、どこまでが史実なんだろう?と不思議に思う。ググってみたら、武将たちや戦の成り行きはほぼすべて史実みたいですね。城壁作りと鉄砲屋の当時の実態も、可能な限り調査したんだろうな。その上で、2つの陣営のパーソナリティや出来事は全部フィクションだ。最初から最後まで、なるほど!そうきたか!と驚きつつ納得する戦略のかずかず。締めくくりもきれいで、甘ったるい情緒に流れずぴしっと決まりました。この作品の直木賞は、きっと意見が分かれなかったんじゃないかなー(想像)。
立体で見てみたいけど、映画一本では物足りない。「塞王」を主役に、大河ドラマ作ってくれないかな?というスケールの大きさでした。拍手喝采!