劉慈欣「円」775冊目

「三体」で一気に世界のベストセラー作家となった劉慈欣の短編集。ケン・リュウが編纂したアンソロジーで何作か読んだことがあるけど、これほどまとまった形は初めてです。

「月の光」と「円」はアンソロジーの中のひとつだったのに、よく覚えてる。今回も、鯨を使った密輸を企てた人のお話「鯨歌」、地中の石炭層が発火したら…?という「地火」、山奥の学校で子どもたちに暗記をさせた「郷村教師」、運命が分岐したパラレルワールドをそれぞれ「繊維」と呼ぶ話、高齢の科学者が弾くバイオリンを聞く若者「メッセンジャー」、天候を変えられる地球上の”特異点”の同定についての「カオスの蝶」、スーパーコンピューターのようなものが漢詩を極めようとする「詩雲」、難民たちが戦争の代わりに設けられた1:1のオリンピックでアメリカに挑む「栄光と夢」、少女の夢のシャボン玉が町を救う?「円円のシャボン玉」、莫大な料金を払えば300年の命が手に入る「2018年4月1日」、そして母親のすべての記憶を持って生まれてくる胎児を描いた「人生」。

ひとつひとつのアイデアがあまりに大きな可能性を持っていて、それぞれで映画が1本ずつ作れそう。気楽にオヤツなんか食べながら読んだりできないくらい濃いです。さすが劉慈欣。続いてまた短編集が出るそうなので、楽しみにしてます。