森博嗣「歌の終わりは海」774冊目

ミステリーじゃないシリーズがあったのか…。何も知らずに読んでしまったら”解決編”がなかった。先日読んだ「冷たい密室と博士たち」は、冒頭に現場の見取り図が載ってるいわゆる”本格ミステリ”だったので、頭を働かせる覚悟で読んでしまって肩透かしになってしまいました。

探偵事務所を経営している小川、加部谷という二人が、あまりにもお気楽でまるで探偵じゃない。推理なんておよそできそうにないけど、浮気調査もひたすらめんどくさいと愚痴ばかり言ってる。「博士たち」に出てきた不器用な探偵と美少女、みたいな”一般人が憧れる優れた人たち”は一人も出てこず、かといって登場人物の誰にも共感が持てない。

表紙に、日本語タイトルを端的に英単語で「Song End Sea」と書いてあるのが「尊厳死」のことらしく、内容もまさにそういう話で、前に書かれた「馬鹿と嘘の弓(Fool Lie Bow:風来坊)」と同路線の社会的なメッセージが込められてるそうです。ストレートに言わず小説化するのが作家なのかな。でも…ページのほとんどを占める会話が、打っても響かず冗長で鈍感で(あえて、なんだろうけど)、途中からいらいらしてななめ読みしてしまった。謎解きをしない前提で書いてるので、目から鼻へ抜けるような切れ者探偵にトリックを看破されては困るってことか。

なんだか実験的な作品なのでした。