須賀敦子・文、酒井駒子・絵「こうちゃん」1034冊目

須賀敦子が書いた童話がある、それを絵本にしたものが日本で出版されている、というので調べて読んでみました。絵は私の大好きな酒井駒子です。

「こうちゃん」。「こうちゃん」って誰だろう。座敷わらしだけど室内より屋外によく出没する。神出鬼没で、人の子とも思えない。感受性が強くてときどき号泣する。でも、そこにこうちゃんがいると思うだけで、なんだか安心する、救われる。そんな不可思議な存在です。

須賀敦子にお子さんはいなかったと思う。読んだ感じ、これは持つことのなかった彼女の子どもというより、いたかもしれない彼女のちいさい兄弟のような感じ。幼くてあどけなくて、まだ現実と夢の区別がついていないような。

で、読んでるとなぜかちょっと切ないような気持ちになる。これを書いていた頃はまだペッピーノと結婚していなくて、多分すてきな恋をしていた頃のはずで、まだ彼女は大事な家族を亡くす痛みをリアルには経験してなかったはずなのに。

冒頭で「鉄のくさりをひきずって」いたはずのこうちゃんは、後の場面ではそれほどの荷物を持っていないように見えます。同じ人なのか、それとも子どもたちの総称なのか?

なんにしろ、須賀敦子の文章は(酒井駒子の絵も)読み終わったあとに不安が残る。その不安はでも少しあかるい、いい気持ちなんだ。人の作ったものがどう人の心に作用するかは、私にはとても説明できない・・・。