都甲幸治「教養としてのアメリカ短編小説」948冊目

面白かった。

大学が英文学科だったので、アメリカの短編小説を「購読」の授業でたっぷり読まされたものでした。どれもけっこう暗くて、ちょっとホラーみたいな作品もあったな、人間って不思議だなと思ったりしながら、辞書を引き引きけっこう夢中になって読んだな。大好きだった闇に吠えるブルース・スプリングスティーンが「ボーン・イン・ザ・ USA」を発表して、アメリカ賛歌だと大規模に誤解されたのがその直後あたり。私がアメリカを苦手に感じ始める直前に親しんでいた小説たち。カッコいいところだけじゃない、いい人でもない、後ろ暗いところや空虚なところも含めた登場人物や、物語の背景に対する著者の読み込みが深くて、作家に近づこうとするまっすぐな姿勢が感じられました。

この本を読んでいる間、あの頃に感じていたアメリカ短編小説の魅力が数十年ぶりによみがえりました。あの頃は、世界史を科目として履修したことがなく、海外旅行にもまだ行き始めていかなったので、アメリカをめぐる世界の動きや、国内の戦争や人種問題のことも何も知らなかったけど、今は少しだけ、実感を持って読み込めるかもしれない。

この本で取り上げた作家はエドガー・アラン・ポー(黒猫)、ハーマン・メルヴィル(書記バートルビー)、マーク・トウェイン(失敗に終わった行軍の個人史)、シャーウッド・アンダソン(手)、F・スコット・フィッツジェラルド(バビロン再訪)、ウィリアム・フォークナー(孫むすめ)、アーネスト・ヘミングウェイ(白い象のような山並み)、J・D・サリンジャー(エズメに)、トルーマン・カポーティ(クリスマスの思い出)、フラナリー・オコナー(善人はなかなかいない)、レイモンド・カーヴァー(足もとに流れる深い川)、ティム・オブライエン(レイニー河で)、イーユン・リー(優しさ)。

何冊か読んじゃうな、これ。英文科卒なんだから、原書で読むべきかな・・・読めるかしら・・・。