ホルヘ・ルイス・ボルヘス「ボルヘスとわたし」973冊目

ボルヘスの短編集は何冊か読んでるけど、このタイトルになっている短編「ボルヘスとわたし」が読みたくて借りてきました。あまり他の短編は読んでないけど、今回はこれでいったん返却予定。

どうしてもこれが読みたかったのは、以下のように連なって現れてきたので、読まないわけにいかなくなってしまったから。

ニコルソン・ベイカー「U&I」:アップダイクが好きすぎて、アップダイクと私というエッセイを書いてしまった)

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ジョン・アップダイク「アップダイクと私」:有名な小説家アップダイクと、自分自身との違和感などを語ったエッセイ。元ネタは「ボルヘスと私」だと書いている

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ボルヘスボルヘスとわたし」。

ここまで遡ってきて読んでみると、ボルヘスという作家はもう他人(別人格というよりさらに疎遠)として扱われていて、”わたし”はボルヘスの著作より他の作家のほうに自分自身を感じるとまで書いてる。自分の生活のなかの愉しみや苦しみといった味わいを、一度書いて発表してしまうと、それはもう他人のものになったような気がする、と日本の作家なら書くところかな。”わたしともう一人の男”っていう表現なんかも、ボルヘスっぽくてすごく惹かれる。

1974年発行の新潮社の本は行間が狭くて読みづらいけど、まだ日本では珍しい傑作を集めて紹介しようという気概やワクワク感が感じられて、とても魅力的です。またいつか、時間のあるときにゆっくり読み直してみます。