NHK放送文化研究所「NHKが悩む日本語」972冊目

面白かった。辞書を編纂している飯間浩明のツイートや文章と比べると、従来の”正しい日本語”を守る傾向が強い、保守的な印象。飯間氏の仕事は「わからない言葉を調べるための書物」を作ることで、NHK文研の仕事は「だいたいの人がわかり、自然と感じる言語を使った放送」をする(させる)ことだから、拾い上げる語彙の幅は当然、辞書のほうが広くなるんだろうな。

この本で取り上げた判断は、知らなかった言葉の背景や使い方を含めておおむね共感し、学べることが多かったけど、「ホームページ/ウェブサイト」だけは判断が古い感じがした。専門用語の範疇になるのかもしれないけど、ウェブサイト全体のことを「ホームページ」(ウェブサイトのスタートページ)という、意味としては誤った言葉を使うことはだんだん減ってきてるはず。

ウェブブラウザを立ち上げたときに表示されるページのことを「ホームページ」と呼んでたのは専門家や愛好家だけがパソコンでインターネットを使い始めた1995年くらいの話じゃないかな。それ以前は多分、ウェブサイトを持って外部に公開している団体は極めて少なかったので、ブラウザのスタートページ(「ポータル」とも呼んでたな)=インターネット全体の「ホームページ」だったのかも。少なくとも1995年頃、インターネットアクセス可能でブラウザを備えた初のOSであるWindows 95が発売された頃には、ウェブサイトの最初のページのことを日本では「ホームページ」と呼ぶようになって、そのへんから一般の人がインターネットを使い始めたので、「現在では「ウェブサイト」のことを「ホームページ」と呼ぶことが多くなってきています」というのは2000年くらいの記事ならまだしも、2023年の今にはそぐわない。

「日本国内ではインターネットの利用が拡大した時期にウェブサイトのことを「ホームページ」と呼ぶ「意味の拡大現象」が定着し、現在も広く使われています」のように書いてほしかったな。大昔のパソコン用語辞典を元ネタとして何冊か引いてるけど、専門用語辞典と国語辞典の扱いを同じにするのはおかしな話。医学でも金融でも何でも、ほぼ定着した専門用語が一般に誤用されているケースはあるけど、誤用は正して放送することが多いはず。なんでコンピューターだけ「ホームページ」を許すんだろうな。いまどきコンピューター関連の書籍やネット記事でウェブサイトを「ホームページ」って呼んでるものは皆無なのに。ここだけ、次の版からでも直してほしいと思ってしまった・・・。