北原保雄 編「問題な日本語」978冊目

最近ときどき日本語の変遷についての意見をどこかで読んだり見聞きしたりすることがあるんだけど、小さい頃の厳しい国語の先生たちとは違って、「言語は変わっていくものだ」「俗語や、当初は誤りとされた読みが定着して正しいものと見なされることは歴史的に見て必須である」という意見のものが多い。その中で、この本は先日読んだNHK放送文化研究所の本の次に厳しめの印象でした。

思い返してみると、大学に入ったばかりのころは友達に「揚げ足取りのケイコ」って呼ばれてたっけ。細かい読みや言い間違いをいちいち指摘するので、みんなカチンと来てたらしい。(昔から空気読めなかった)でもそれから数十年、機械翻訳は”正しい文法”や”正しい訳語”を見つけようとすることを辞めて、統計で最もよく使われているものを積み重ねることでとうとう実用化されたし、私も少しはものがわかるようになってきました。

ところで、この本でもコンピューター関連の外来語の長音表記のことを「メーカーによってまちまち」と書いてるけど、言葉の専門家にはぜひJIS規格の変更のことを思い出して、あるいは知っていてほしいなぁと思うんですよ。。。たとえばこのサイト

長音記号のトリセツ|2分でわかる表記ルール | マニュアル制作のトリセツ

以前のJIS規格では「コンピュータ」と書くことを推奨していたのが、2019年の変更(内閣告示による)で「コンピューター」をデフォルトにした。それに従ったメーカーはこの時点で表記を変更した、という話。そういう事情を知らず従来の表記を使い続けている人や、英語で普段PCを使っている人がカタカナ表記をするときなどに、たとえばメールが「メイル」になったり、今でも「コンピュータ」と書いたりしているのかもしれません。日本のコンピューター業界で用語統一に関わる人たち、このときいっしょうけんめい対応したんですよ。どういう事情で内閣告示が行われたのか知りませんが、言語の専門家が書いた何冊もの本でこの辺がきちんと説明されているものを見たことがなくてちょっと残念です。だってこんな風に表記ルールが変わることで混乱が起こるのって、この先も別の用語世界でありうるわけですよね。過去の変遷をしっかり分析することで、今後の用語統一のポリシー策定につなげてほしいなと思ってます。