ロバート・A・ハインライン「時の門」717冊目

先日読んだ筒井康隆ジャックポット」が、この短編集の中の「大当たりの年(The Year of the Jackpot)」からタイトルを取ったと書いてて、気になったので乗っかってみました。

「大当たりの年」では、<以下ネタバレ>大当たりというより、いきなりバス停で服を脱ぎ始める若い女性など、奇妙で原因不明な現象が世界中で立て続けに起こった年に大災厄が訪れました。ハメルンの笛吹きみたいに、地震の前に逃げ出すネズミたちのように、人間にも災厄の前兆が現れるということなんでしょう。今の地球に起こっていることは”おかしなこと”ではなくてなにかの動物から人間に感染して広がった重篤なインフルエンザのような感染症であって不思議とか奇妙とかではないので、ちょっと煽られちゃったかなって気持ち。でも、おかげで、「夏への扉」をいつ読んだか覚えてないハインライン、久々に読んでみると、コンピューターの時代が訪れる前のSFの味わいがじわじわきます。

私がこのところ愛読している中国圏の最近のSFのほとんどが、コンピューターの進化が前提にある世界を描いていて、その世界に登場するスマホの発展形や様々なインターフェイスを持つPCには、近々登場しそうな説得力があります。でも、宇宙に関してはハインラインにもケン・リュウにも同様のひらめきを感じます。現時点でまだ到達していない星との接触や、異星人のほぼゼロからの創造は、今と70年前に書かれたものに想像力の違いを感じないのは当然かもしれません。

「時の門」なんて、タイムマシンものと言うと昔からあるけど、インターステラーみたいに時空を飛び越えた後のつじつまについて考察していてちょっと新鮮だし…この辺のことは実現できてない分、70年前も今も作家の想像力がすべてだからな。この辺は、70年前のSF映画の制作テクノロジーが追い付いてなかった感じとは違って、テキストは歳をとらない。

面白かった。読んでみてよかったです。