やっぱりこの人はおもしろい、この人の書くものはおもしろい。
「VOX」は30年前に英語で読んだ記憶がうっすらあるだけで、何やらすごくイヤらしい小説だった気がしてる(なんでそんなもの読んだんだ)けど、この本を読んでいると、あれも別にイヤらしい小説ではなかったと思えてきます。
なぜかというと、この本では主人公の男性(妙に知能指数が高いのに派遣でテープ起こしの仕事をやっている)が、時間を止めて、自分だけが自由に動き回れるというSF的特殊能力を身に着けるのですが、やることと言ったら片っ端から女性を裸にして、眺める。ちょっと触れてみる。誰かの目の届くところに自作のエロ小説を置いてみる。・・・など、エロいんだけど知らなければ誰も傷つかないいたずらばかり。この著者の想像力というか妄想力は天地創造してしまいそうなくらい際限がなく、しかしその世界はかなり平和でちょっとエロいけどだいたいみんな楽天的で優しい。今思うと「VOX」もその程度のものだったのかもしれない。読んだときの年齢が今(中年)と違う(うら若い娘)ので、受け取り方がかなり違ってたのかな・・・。
ところで、この翻訳がまた素晴らしいですね。読みやすく、かなり正確に訳しているのに言葉選びのセンスがよくて、原著者のウィットまで伝わってきます。
今や図書館で予約すると私以外に誰も予約してない彼ですが、その後も面白い小説を書き続けてるんだろうか。日本語訳が出版される本なんて数少ないんだから、こういう場合はちゃんと原書を取り寄せて読まなきゃなぁ。