ニコルソン・ベイカー「U&I」923冊目

Uってジョン・アップダイクのことか。好きだけどなぜか全部読んだ作品が少ない小説家のことを、知りもしないのにあれこれ妄想して1冊本を書いてしまった、という。やっぱりニコルソン・ベイカーって変な人だ。

でもこの本はすごく面白い。語り口がカジュアルでアケスケだし、自分がどこに行ってどう思った、何を読んで(あるいは読まずに)どう考えた、ということしか書かれてないので、誰かの面白いブログでも読んでるみたい。書いてあることはアップダイクの作品にしてもパーティにしても、知らないことばかりなのに、なぜか面白い。この人はとにかく感受性が豊かで、目の付け所や比喩のしかたが独特なんだ。誰かの借り物、手あかのついた表現を極度に恐れて、常に自分の文章を批判し続ける。自分自身の見た目や考えも批判する。基本的に、自分を卑下してる文章は読者をその分持ち上げてくれるから、緊張せずに楽に読める。

それに翻訳が素晴らしいんじゃないだろうか。この有好宏文という翻訳者はいったい何者だ。こんなにクセの強い文章をどうやったらこんなにスルスルと読める日本語にできるんだろう。アップダイクも読んだことないし、その他この本のなかで言及される物事の半分以上見たことも聞いたこともないのに、まるで旧知のことみたいに読めるのはなぜだ。きっと手練れの「読み手」「書き手」で、かつ博学な人なんだろう。と思いながらググってみたら、この本の翻訳は30歳そこそこでやってたようです。すごいな、さすが京大卒。その後キューバへの留学を経て今はアメリカのアラバマ州にいるらしい。理想の人生だ。

老い先短めになってきた自分の今後のことを、夢見つつ現実に足を降ろして考えてみる。4月から仕事が激減するかもしれず、なんとか生活はするとして、空いた時間をどうするか・・・。テキスト買って安心するだけじゃなくて、本気でスペイン語やってみようかな・・・(本を読むとそれ以外のことを考えこんでしまうことが多いな私)