佐々涼子「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」922冊目

震災で東北の製紙工場が被災し、雑誌の紙のストックが印刷会社の倉庫にあと1,2ヶ月分しかない!と、取引先の出版社が紙を探して奔走してたことを覚えてます。結局、いつものクリーム色と違う真っ白な紙でその雑誌を印刷したのでしたが、その紙を使ったのは2回くらいで、すぐに元の紙の生産が再開したのは、多分この本に書かれた経緯があったからなんだろうなと思います。あの時期、同じく東北にあったDVDのプレス工場も被災して、発売が少し遅れたり、別の会社に発注したりしたこともありました。でも2012年あたりがプレス枚数のピークで、その後は減る一方だったなぁ・・・(雑誌の発行部数も似たようなかんじ)

・・・という、出版業界や製紙工場、印刷工場、などのさまざまな物語が見られるのかなと思っていたら、冒頭で東日本大震災が発生。被災した製紙工場とその地域の生々しい描写が続いて、ちょっぴりトラウマを思い出してしまいました。あの日から、テレビ番組制作会社では、揺れが収まってからもフロアの真ん中や管理職の机の上に置かれていたテレビモニターで津波の映像が何日も流れ続けていました。この著者は死から目を背けないノンフィクション作家だということを一瞬忘れてた・・・。

この本では、さまざまな紙のことが書かれてるけど、文庫本などに使われる中性紙によって本の寿命が延びたことにも触れています。確かに、母が持っていた文庫本や私が小さい頃に買った文庫本は、紙が茶色に変色して、もろもろと弱ってる。物理的な本の寿命が長くなったけど、読み捨てられる割合は増えてるんじゃないかな・・・。

「エンジェルフライト」もこの本も、個人の生活を犠牲にして仕事に尽くす人たちの本です。精神的にも身体的にもフルタイムの仕事を続けられなくなってセミリタイアした私には、まぶしいような、心配なような気持ちもりますね・・・。