ジョナサン・サフラン・フォア「イーティング・アニマル」319

肉食、というタイトルの本。

私の好きな小説家が書いた、ノンフィクションというか、著者本人の意見が強く出たルポルタージュのような本です。

タイトルからは、ベジタリアン礼賛を予想するかもしれませんが、「そうではなく、動物を殺して食べるのであれば、せめて少しでも苦痛をやわらげて、心して食するよう願う」という強いメッセージが込められています。著者はアメリカで(多分日本でも)広く行われている工場式養鶏や養豚のあまりにもむごい実態を見てベジタリアンになった

そうですが。

日本には古来、「いただきます」と毎食事前に手を合わせる習慣があって、年に一度「感謝祭」をやるキリスト教文化とは出だしから違うような気もします。魚介類は小さいけれど一般の家庭でもまるごと調理することが多いので、生き物を食べているという意識はどんな人も多少は持っていると思います。工場式で飼われていた家畜より自然な状態で育てられたものの方がおいしいというのは一般的に常識です。でも、意識しようとしなければ、パックにきちんと入って安く売られている肉を何の気なしに食べるようになるし、卵の値段がほかの食べ物と比べて安すぎることに疑問を持たなかったりもします。

私はこれを読んで、ベジタリアンになろうとはやっぱり思わなかったけど、肉を買うときは自分に本当に必要な分量を考えよう、できるだけ自然に飼われていた家畜を食べよう、できるだけ自然な材料を使って昔ながらの製法で作られた加工食品を選ぼう、という気持ちは強くなりました。

前に朝のバラエティ番組にほんものの子ブタが出てくるのが、私はすごくイヤでした。

毎日殺して食べている生き物をペットのようにして朝の食卓に見せるのって、悪趣味な気がして。止めたようでほっとしています。

私は猫を一匹飼ってます。家族として仲良く暮らしてますが、そいつをもらって帰るとき、道路で事故にあった猫を見ました。たまたま出会えた命のありがたみに感謝して、自分のまわりにいる生き物たちを大切にして生きるしかないのだ、と思います。

…なんてことも言えなくなるくらい、実際はかなりキツイ本です。まともに読むと肉なんて食べられなくなるかもしれないので、お勧めはしません。今日はこんなところで。