ジェシカ・ブルーダー「ノマド 漂流する高齢労働者たち」731冊目

やっと読めました。映画を見てからずっと読みたかったやつ。映画では、フランシス・マクド―マンド演じる「ファーン」とデヴィッド・ストラザーン演じる「デイヴ」以外はリアルなノマドの人たちが素で出てるように見えたけど、役に近い素人が完全に”演じる”形だったんですね。素敵なスワンキーおばさんをみんなで悼む場面がすごく良かったんだけど、生きててよかった(笑)。今更ながら、クロエ・ジャオ監督の前作「ザ・ライダー」と同じ作り方だったんだなと納得です。

ファーンが家を出た理由となっていた「工場の閉鎖に伴う城下町の消滅」は、実際に起こっていたけど、それが理由で路上に出た人には著者が出会えなかったらしい。だからそこのエピソードを新しく書きおこしたみたいだけど、ファーンが月ぎめで借りていた倉庫の荷物をほとんど処分して身軽になった場面は、リンダ・メイのエピソードを参考にしてましたね。

1990年代にアメリカに仕事で移住した友人が言うには、たいした審査もなく誰も彼も家を買っている。ローンヒストリーがないと何もできないから、現金で払えるのにいちいちローンを組む。…おかしな経済だなと思ってたら、家の借金を返せない人がたくさん出て来た。規模感を見ただけで、借りる人だけの問題じゃないことがわかる。

映画ではアマゾン倉庫やキャンプ場の仕事は、本に書かれているよりずっと楽しそうだったし楽そうに見えた。そこはフィクションとして抑えたのかもしれない。だからかな、私がこれほど映画の中の世界に心酔してしまったのは…。彼女たちよりはだいぶ若いけど、とてもじゃないけどこれほどの労働は私には無理だ。精神的にではなく、肉体的に働けなくなった人たちはどうなるんだろう。キャンプサイトでときどき起こる自殺には、そんな理由の人もいるだろうか。

読み終わっていろいろ検索して感想や記事を読んだら、「日本人にはこういう開拓者精神がないから、高齢者はノマドにもなれない」って書いてあるものもありました。開拓者精神がある人もいると思うけど、社会全体を俯瞰するとその通りだと思う。今の日本では、生活保護でフルタイムでバイトするのに近い金額がもらえるのは、国民皆保険と同じくらいすごいと気づく。ちょっと不安になる。国は膨大な赤字を抱えて、立ちいかなくなる日がいつか来る。サッチャー政権がやらなければならなかったことを、やれる首相は日本にはいないかもしれない。でも日本はアメリカになることは拒否し続ける。こういう財政難を乗り切る方法ってあるのかな。あるとしたら突然数百年分の石油が出る、とかかな…でもそしたら日本がドバイになるだけかな…(政策のような難しいことを、考えてみようとしたおかげで、まとまらなくなってる)

思うに。ノマドは実はすでに日本にはたくさんいるのだ。高齢者はタダみたいな値段で売られているスキーリゾートマンションに移住し、比較的若い人たちはネットカフェを出て、改造もしてない自動車で暮らしてる。24時間営業の店の駐車場で寝て、コンビニやファーストフードでご飯を食べて、トイレを借りてる。開拓民のようなたくましさや連帯感がなくて、なんとなく自分が悪いようなカッコ悪いような気持ちで、それぞれ孤立してる。私に、壮大な自然の中で、ひとりを嚙みしめながらコーヒーをわかして飲む強さはあるだろうか。どんなときにも負けない、優しくて強い庶民でいられるだろうか。

日本の経済が破綻したら、まず生活保護とか減らされるんだろうな。将来に備えて私も、野草の見分け方とか料理の仕方とか、今のうちに調べておくか…(キノコは見分けられないらしいので、やめとく。って何の話でしたっけ)