ケン・リュウ「紙の動物園」578冊目

ほとんどがいわゆる未来SFの短編集「母の記憶に」を先に読んでしまったから、というのもあるけど、賞をそうなめにした短編「紙の動物園」に機械もソフトウェアも出てこないのが意外でした。SFの「サイエンス」の部分がなくて、ファンタジックで情緒的な美しい作品。民話、昔話のたぐいといってもいいんじゃないかな?

もののあはれ」も、日本人ってこんなに素晴らしい民族だっけと照れるくらい、しっとりとした味わいのある、しかし宇宙SF。

この2編をはじめとする名作揃いでした。ほんとに原題中国系SF作家、というかあの3人はすごい。人間への深い洞察、愛と憎しみへの理解と共感、現存するテクノロジーと開発されつつある未来のテクノロジーの把握がすごく高いレベルにあって、驚きます。彼ら相当知能指数が高くて作家じゃなくても一流の仕事ができる人たちですね。日本のそういう人たちは何をしてるんだろう?過去に傷ついたことの自己憐憫におぼれる中二作品(そういうのも実は好きでかなり読んだり映画見たりしてるけどさ)のまま、終わりそうになってないか?

ロシアや南米の「辺境」の作品の面白さにしばらく夢中になってたけど、在外チャイニーズもある意味、作家として注目されてこなかった辺境の人たちなのかも。まだまだ夢中になって読んでいきたいと思います。

しかし、それに匹敵するレベルの映画作品はあまり見ない気がするな。すごい人が出てきてくれたらいいのに。 

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)