黒川伊保子「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」951冊目

「言語沼」で紹介されていたのでこちらも読んでみます。タイトルが秀逸なんだけど、怪獣の話はなかなか出てきません。先行研究がなく、感覚を科学的に分析していく本だということはわかるけど、音の分析は科学的でも、その周辺の「赤ちゃんはおっぱいを食べ物だと思うので日本でもマンマは最初に発する音として重要」とか「ジャンプは名前がいいから売れてるけどチャンピオンは名前のせいでいまいち」のような考察は、とくに科学的とか分析的という気がしなくて、なんとなく読んでいてもやもやします。

この「もやもや」の原因の一つは、「言語沼」で日本のハ行は昔はパ行だったという話があったこと。藤原不比等はプジパラノプピトゥだった(記憶あいまい)、みたいな話があって、そういえば昔そんな話を聞いたことがあったなと思う。しかしそうすると、ハハという語はふわっとしている、という語感を語るのは無意味じゃないか?日本語の音の変遷に触れることなく、最初に生まれた語を今の音から推測したり、それを赤ちゃんの発声と結びつけるのは科学的じゃない。そこは置いといて、いま存在する言葉に対して私たちが何を感じているか、新しく語を生み出す際に何を重視すべきか、だけに集中したほうがよかったんじゃないかという気がします。

あと、クオリアっていう言葉は脳科学なんたらで聞いたことがあるけど、結局何を意味するのかわからなくて、この語が使われるたびに意識が本から離れそうになります。でも、言葉は音である(表記はあとからつけたもの)、言葉の音には人の感覚を刺激する効果が確かにある、という点にはすごく納得したし、この先なにか大事なものに名前を付けるときにはもういちどこの本を見てみたいと思いました。