内藤陳の「読まずに死ねるか!」を読んだら、冒険小説を愛するか彼が新宿ゴールデン街の自分の店の名前にまでした名作を読まずに死ねないと思って、読んでみました。
感想は、「かなり意外」。冒険小説って私のイメージは、車で移動するなら全速力のカーチェイス、丁々発止の駆け引きありカンフーあり暗号あり、みたいな壮大なもの。一方この作品では、室内や車内の場面が多く、移動するときも音を立てずゆるゆると進む。主人公は戦時中は特殊任務で名をはせたが、当代随一というわけではない、相棒のスナイパーも、本人の言うところによると「自分よりすごい奴が二人いる」。この二人が護衛するのは、パリからリヒテンシュタインを目指す実業家。富豪ではあるけど世界一とかではない。・・・全部が全部、すこし地味なのです。この地味さが、玄人受けするのかな?
でも、ストーリーに無理がなく、だんだん明らかになってくる事件の全貌にすごく納得感があります。登場人物といっしょに、最初は「なんで俺なのか」「こいつにどういう事情があるのか」「なんで情報が洩れてるんだ」など考えながら進み、最後は「なんであのとき気づかなかったんだろう」と一緒に思う。読み終えたあと、じわじわと「終わった・・・」という感慨がある。だからこれは読み継がれる名作なんだな。
ちなみにタイトルの意味は、作品の最後の行で明らかになります。
そしてなんと、奇跡のようなタイミングで、来週からNHKFMでこの作品がラジオドラマとして放送されるらしい!これ1965年の作品で、新訳も1976年、文庫版も2016年。2023年7月3日から誰がなぜドラマにしようと思ったんだろう。聴くのが楽しみだなぁ・・・。
新宿ゴールデン街に今もある「深夜プラス1」にも、いつか一杯飲みに行ってみたいな。。。