エマニュエル・ドンガラ「世界が生まれた朝に」881冊目

高野秀行「語学の天才まで一億光年」を読んだら、この本を卒業制作にして最優秀賞を取ったと書いてあったので読んでみました。リアルなのか空想っぽいのか、西欧批判なのか地元批判なのか、はたまたすべてを認めているのか、価値観がひとつでなく移ろっていく不思議な、たくましいのにふわふわした物語です。これがアフリカのマジックリアリズムか。

社会的な部分についていうと、主人公は老人になっても同じ部族で集まる習慣のある世代で、隣の町から来た女性と結婚したくても認められない。でも自分の息子世代の若者は、アフリカン・アメリカンの女性と軽やかに結婚して都会で暮らしている。時代を切り開いて、上の世代に反発して生きてきたのに、最後は老醜と見られるだけなのか・・・。という箇所は、いつの時代にも共通する時代の変化だ。

旅行が好きだったけど、コロナ以降の円安のなかでコンゴに旅することはもうないだろう。遠くの大陸の真ん中に、こんな風に生まれてこんな風に生きた人がいたんだ、(小説にしても)と想像するだけで、世界が広がるようなきがするなぁ・・・。