國友公司「ルポ歌舞伎町」1012冊目

あー面白かった。著者のTwitterで、この本がAmazonプライム会員なら「読み放題」(つまり追加料金なし)で読めることを知ってすぐにKindleにダウンロードし、あっという間に読み切ってしまいました。

この人の本は、やくざの世界をやたらと残虐に、あるいは美しく描くことがなくて、ふつうの自分が恐る恐る、好奇心に導かれて、ずんずんと奥へ入って観察を深めていくその視点がフラットで、とても自然に読めるんですよね。

思えば自分も、小さい頃からアンダーグラウンドの世界に興味をもっていました。悪いことが好きというのではなくて、知らないことを知りたいという知的好奇心が強すぎた半生でしたが、今その頃を思い返すと、「危ないからそっちに行くな!」と自分に言ってやりたいような気がします。

今はこうやって安全な自宅でこの本を読んでいるわけですが、もう40年も前になるのか、田舎から大学進学で上京してきたのは。西武新宿駅を使っていたので学生時代は歌舞伎町を通ることも多かった。バンド仲間に誘われて、カラオケ館の入ってるビルの地下のスタジオで夜中に練習してたこともあった。ちょっとオシャレしてパーティなどに行った帰りには、駅の近くで「おねえさんこれから出勤?」とスカウトの人に声をかけられることもあった。慣れないメイクが濃すぎたのか?逆に、この本で書かれているように、どんな地味な女にも水商売に流れる可能性があるからか。

西武新宿の駅ビルの中の店で、友達の結婚式に着ていくドレスを見ていたとき、取り置きを勧められて、結局すごまれて買わされたこともあったな。飲み会で帰れなくなって(タクシーに乗るお金がない)歌舞伎町のマクドナルドで夜明かししたことも。今考えると、背伸びして貧乏じゃない振りをしたり、危ないところに足を踏み入れたりしないで、地味でまじめなお嬢さんをやっていたら、もう少し起伏のない安泰な一生だったかも、と思う(多分今だからそう思うんだろう)。

中年になってからは平気で歌舞伎町の奥のカフェにも出かけていくし、特にオシャレもせずに歌舞伎町タワーの地下のクラブに行くのも平気だ。ひりひりした心を抱えた歌舞伎町の女の子たちに、こんな平穏な老後もあると教えてあげたいくらいだ。(そんなババアになんかなりたくないよ!って思うんだろうけど)

コマ劇場には、上京してすぐ読売新聞を購読した友達が、島田陽子主演のミュージカルのチケットをもらったというので一緒に見に行ったんじゃなかったかな。広場をはさんで向かいのビルに「リキッドルーム」というライブハウスがあって、G.Love &Special Sauceとか見に行った。同じ大学の友達は日比谷とか東京とかの会社に入って、いつまでも新宿に入り浸っている私はなんとなくイケてない感じだったけど、当時から今に至るまで、新宿が私のホームなんだよな。きっとこれからも。

ボランティアで知り合った人が、ある土曜日に、これからトー横の女の子たちの様子を見に行くって言ってた。若さは高く売れる。逆にいうとどんな女でも生まれつき持ってるものは若さしかない。それ以外の部分は、あせらず自分で積み重ねて作っていくしかないんだよね。どんなに冷静でいるつもりでも、承認欲求や、自分を嫌う感情がひどく強いときの自分は、すこしヤバい心理状態なんだと自覚したほうがいい。自分を見失ってる子たちに、私が何かしてあげられることはあるんだろうか・・・。それとも、何もないんだろうか。なんて考えてしまうのでした。