日疋信・日疋冬子「志集第56号 無風 その中の生と死」426冊目

乱読、というのはこういうのをいうのかしら。

おもむろに手当たり次第に、興味のおもむくまま本を読む今日このごろ。

通りがかった新宿西口陸橋下で、あの人が立って「私の志集」を売っていました。

私が上京した30年前から、ずっとそこにいる。Big Issueが発行されるよりずっと前から。

今日も通り過ぎようとして、なんとなく立ち止まって初めてその「志集」を買ってみました。

その人はいつものまっすぐな眼差しで少し笑って、お釣りをくれました。

30年前から変わったり変わらなかったりする新宿西口の風景の一部として、自分が公式に認められたような、なんとも言えないいい気分で、私はニヤニヤしながら歩いて家まで帰ったのでした。

 

で、その「志集」なのですが、第56号なのだそうです。現在の売価は400円。本文16ページ、12編の詩が手書きのきれいな文字で書かれています。どっちが誰の作品かはわからないのですが、91歳の信さんと54歳の冬子さん(販売者ですね)の連名となっています。年の差37歳。(月子さんみたいだね)中にはいくつか、好きだなぁと思った詩があったんだけど、「無断撮影・転載・引用・模倣・作曲・その他一切、かたくお断り致します」と書かれているので、一部の引用もやめておきます。しかし詩っていいですね。感じたままを素直に文字にする。大きなストーリーや伏線や構成は考えなくてもいい。その分感性とかひらめきとかが感じられないと読みとばされてしまうんだろうけど、誰の中にも詩はあるんだろうなと思います。きっと。