小松みゆき他「動きだした時計 ‐ベトナム残留日本兵とその家族」889冊目

年老いたお母さまを自分が住むベトナムに連れて行って暮らすことを中心に書いた「ベトナムの風に吹かれて」を前に読んで、すごいチャレンジだと思った。私が大げさに考えすぎてただけかな?それより、前は見逃してたのかもしれないけど、この本を読んで、小松さんご自身がこれほど仕事をしながら苦学して、すでに様々な仕事を経て日本語教師の資格を取り、ベトナムに渡ったという経緯に驚いた。私自身、違う分野への転職を何度もしているのに、年を取ってからの方向転換は大変だという頭があるからだ。日本語教師の資格ができたのは私がちょうど大学新卒の頃なので、今はベテランになった私と同年代の日本語教師はたくさんいるし、それより前から経験を積んできた人も多い。でもそのタイミングで転換した人の話は多分他に知らない。新卒で海外に渡った人とは全然違う、豊かな授業が最初からできたんだろうな、などと想像する。

この本は最初、「~風に吹かれて」の続編のような軽い気持ちで手に取ってみたけど、冒頭からその重さに緊張した。ベトナムに残された家族の、日本の父に対する思い。この本では、突然の帰国を余儀なくされた日本人父たちの事情を、一部の当事者の手紙から、軍事目的の機密工作行為とも読み取れる部分があるけど、もしかしたらそれが彼らに対する方便で、本当は他の国からの圧力だったのかもしれない。さまざまな、得体のしれない圧力のなかで、思い合うことを最後まで忘れなかった方々の「生き様」に胸がいっぱいになります。

人間ってすごいな。きっとみんな自分の中にすごく強くて美しいものを本当は持ってるんだろうな。外のものごとだけじゃなくて、そういう大切なものに意識を持っていたいなと思ったのでした。