イアン・スティーヴンソン「前世を記憶する子どもたち」890冊目

長年愛読している佐藤正午が、生まれ変わりが話の軸になっている「月の満ち欠け」という小説を書き、それで直木賞を受賞し、それが映画化されたのを先日見てきたところ。その中で、前世を記憶していると思われる子どもを持った親たちが参考書として手にするのがこの本。私は佐藤正午がこのテーマを取り上げることがとても意外だったので、この本も読んでみたいなと思って手に取ってみた次第です。

548ページもある本で(うち150ページが原注と参考文献)、内容は著者が長年の研究の末、前世記憶はインチキじゃないけど絶対にあるというものでもない、とにかく興味深いから見てみて、という感じの本です。めちゃくちゃ前世に興味があるわけではないので、斜め読みしかしてませんが、感触としては「UFOはあるのか」「宇宙人はいるのか」といったテーマを極力まじめに研究したものと似ています。こういうものほとんど、「ないという結論が出ていないからには、あるかもしれない」と思うのですが、今の科学力で解明できると思えないので、あまり深堀りすることに興味が持てない。

だから斜め読みしたあとも、「月の満ち欠け」に関してはどうも半信半疑の気持ちは変わらなかった、というのが正直なところ。

あの小説によって佐藤正午(小説の書き方ではなくコンテンツの方向性だけ)が不可逆的に変わってしまったのか、それとも従来通りの部分がまだ大きいのか、あるいはもっと違う方向へどんどん進んでいくのかに興味が尽きません。現在執筆中の新作が年明けからウェブ連載されるそうなので、心待ちにしています。