松浦寿輝「花腐し」1044冊目

<小説と映画のネタバレがあります>

映画が印象的だったので原作も読んでみたくなりました。小説と映画はかなり違うらしいという認識で。読んでみたら、意外なところが同じで、意外なところが違ってた。

意外に同じところ:アパートの中の様子。アパートの女の子がクタニにからんでくる。クタニが最後にアパートを出ようとしたときの描写。

意外に違ってたところ:ショウコの描写が極めて少ない。イセキはショウコと何の関係もない。アパートの女の子たちと大家の国籍。飲み屋のイセキへの対応の良さ。ショウコの最後。

予想通り違ってたところ:からんでくる女の子が二人。クタニとショウコがピンク映画業界。

味わいは映画と小説とでかなり違うけど、どちらも完成度高いと感じました。映画には小説にない、人間のおろかさに対する慈しみが強くある一方、小説のヨゴレた世界も美しくさえ見えてきます。そしてどちらも、人間世界の底の底でうごめく人々への理解や共感が深くて、違う部分が多いのになんか確実に通じ合ってるものがあるのが不思議なのでした。