小川哲「君のクイズ」1050冊目

面白かった。舞台が現代で、おもにクイズ選手権番組の1つの問題を中心にして書かれているので、わりと短い、軽い作品という印象。すくなくとも、前に読んだこの作家の作品、重厚長大な「地図と拳」のことは思い出さなかった、名前は憶えてたのに。

クイズ選手権で、天才肌だけどクイズ歴の短い男と、長年クイズをやりこんできた男が一騎打ちの末、天才肌の彼が勝つ。しかも最後の問題を言い始める前に。

個人的には、私は科目でいうと国語が得意で、営業に行くなら相手のことを調べてから行く、講演をお願いするなら著書を2冊くらいは読んでいく、というのを昔から心がけてるほうなので、買った本庄の”勝ち筋”には見覚えがあった。そもそも記憶力が悪いほうなので、クイズは無理だけど、もしも選手権に出場するとしたら、私もまず番組プロデューサーがどういう番組を作ろうとしているかをねちっこく調べ上げるだろうな。盛り上げるためには、誰か一人だけが答えられるクイズを混ぜる演出をしておく。出場者一人ひとりを調べ上げる。…クイズ選手権は、天才vs天才が、一切の演出のないところで勝負する将棋や囲碁と比べると、そういう意味でずっと御しやすいと思う。

そうなると、何が番組を盛り上げるか?という感覚を鋭く持っている人が強そうだ。テレビ向け、というか。私は根っからのマイナー志向でアングラ志向(というか、私が心底いいと思って推すものはあまり売れない)なので、テレビ向けじゃないんだよなぁ…。審査員を調べ上げて、興業がふるわなくてもキネマ旬報ベストテンを当てる、とかなら可能かもしれないけど、そもそも映画館に足をはこぶのもおっくうだし、選ばれた作品を見るのでせいいっぱいなので、やっぱりそれも実現できないわ。。。。