海部美知「パラダイス鎖国」111

きっとこれから、マスコミやブログ界でこの本について取り上げる人が1000人は出るでしょう。秀逸なタイトルでキャッチーに注目を集め、ぬるま湯だと思っていたらいつのまにか沸騰しかかっているお湯に浸かった日本の人々に警鐘を鳴らす、愛ある提言書、です。個人的にはWeb進化論より、調べ物をきちんとしてあるし、視点の公平さや読み手に対する責任感が感じられるので好きです。前半を読みながら、そうなんだよなぁとか違うんだよなぁとか勝手に考えながら読んでたことが、最終章では全部まとめて書いてありました。なので、突っ込むところはありません。

日本はともかく、アメリカがここにきて一気に弱点をさらしてることにはあまり触れてないけど、これは「日本対アメリカ」で本全体をまとめるとかえって偏ってしまうと考えて配慮したのかもしれません。

以下、例によって心に残ったポイントをメモ:

p33「パラダイス鎖国」とか「ガラパゴス携帯」とか、電話業界関係の人ってインフラの標準化のことを強くイメージして、こういう言葉で国全体を語りがちな気がする。本を読むと当たってると思うけど、やってる仕事によっては電話の人ほどピンとこない人もいるかもね。

私の場合、数年前は、1,2年くらいアメリカで仕事してみても面白いかも・・・と思ってたけど、最近は毎朝干物を焼いて弁当を作ったり、週末に太極拳をする生活が心地よくて、このままがいいやと思ってる。私はアメリカに憧れたことはないし、イギリスの生活が好きなのはむしろ不便だからだ。アメリカにまだ私が知らない秘密がありそうだと最近感じなくなってるからか、好奇心もあまり感じなくなってる。でもシリコンバレーには行ってみたくなりました。

p36 日本の携帯各社は、目の前の高機能化競争にばかり目が行って、リソース配分を間違えたために世界市場を得られなかった、とあります。・・・日本の半導体製造業者が韓国に抜かれた話に似てるような。一般に、技術者は文系というか正しくはMBA保持者たちにないがしろにされているので、勉強して自信を取り戻せ(目に物見せてやれ)、と言って日本では技術者を鼓舞しがちですが、技術者のパラダイスはそれよりもっと性質が悪くて、破滅に至ることが目に見えてます。私は、常に最高級のものを買い続けるマニア的な層ってのも重要だから、最高技術にこだわるのも正しいのでは?と思ってたけど、問題はそれはニッチだということ。ニッチだっていう自覚のもとに、それなりの資源投入で小規模に作るのなら正しいけど、巨大メーカーが競争して膨大な資金をつぎこんで最高のものを作り続けるっていうのは、シェンムーと同じで(ごめん、古すぎて)結局はユーザー無視なのではないかと思う。p125には「最先端技術が育つには金に糸目をつけないリッチな顧客が必要」とある。リッチな顧客のかなり多くが成金で、ブランドものによって自分を飾る必要があると感じてるので、最先端技術というか売りたいものをブランドだぞと刷り込むための作りこみが必要なわけだ。リッチで趣味のいい顧客なんて、世界中に何百人もいないんじゃないかと思ったりする。

p41 国内の機器は一般的に高く海外の機器は安い。

いちがいに言わずに実例をあげると、42型薄型TVはUSでは1000ドルを切ったらしい。私はTVに10万円は出せないという金銭感覚だけど、たぶんその42型は、それほど性能にウルサクない私でも買わない品質じゃないかと予想する。国内の機器が高いのにも理由はあるけど、TVみたいに単価が高くて何十年も使うものは、いいものを買うべきです。・・・で私の場合、いつかきっと国産の高品質のが10万を切るまで今の小さいTVを見続けるわけです。

話は戻るけど、大事なのは利益率ですよ!「インテルの戦略」を読み込んだときに作った「OKチャート」を使ってください。

まとまってないけど、とりあえずUpします。