岡倉天心「The Book Of Tea; 茶の本」110

美しき哉、ミニマリズム

いやすごい人がいたもんですね。耽美といっても華美の逆です。

明治34年=1904年、岡倉天心が42歳の時に英語で書いた、茶道の極意を欧米の人々に紹介する本です。彼は幕末に生まれて英語に親しんで育ち、何冊も英語で本を書き、その後ボストン美術館の中国・日本美術部長も経験した人です。

明治23年にわずか31歳で東京美術学校(今の芸大)校長になり、42歳でボストン美術館に勤め、その年に娘が嫁いだりしています。昔の人の時間の流れは速い。

この英語が美しいのなんのって。日本語訳も美しいけど(のちに別の人が訳したもの)、英語に驚きました。茶とか禅というものの理解の深さもすごいけど、こんな人が昔の日本にはいたんだなぁ。

もうちょっとで鼻につくほどの美文で、構成も劇場のように完璧なのですが、派手じゃないし日本人の琴線に触れるものがあるので、心地よいのです。この本はとっておいてまたそのうち取り出して読み直したいですね。

ちなみに各社からいろいろな版が出てますが、私が読んだのは講談社学術文庫です。

以下メモ。

・「(人生のことを)孔子は酢い、仏陀は苦い、老子は甘いと言った」(和文p43) ひとことでそれぞれの思想を言い切ったな!

道教禅宗のポイントは共通していて、それは「相対性(relativity)」である。(和文p46)これはこないだ読んだ「木を見る西洋人、森を見る東洋人」にも述べられていましたね。私も、東洋人がみんなものごとを相対的に見るのではなくて、東洋の一部の考え方だなぁと思ってました。

以上。