柏木博「デザインの20世紀」158

この前にデザイン史の教科書を読んだところ、教科書的で(当たり前だ)工業デザイン、建築、ファッション等のジャンル別に流れを概観しただけだったので、「であんたはどう思うの?何が好きで何が嫌いなの?」と著者を問い詰めたい気持ちでいっぱいになっていたところ・・・

その教科書の編者が自分で書きあげた、この本を入手しました。「文責:本人」って感じで、かなり主観の入った一冊です。そーいうのが読みたかったの。

しかし・・・・

最初の2章は時系列的に流れを追ってますが、研究者ではなく評論家だからか?引用はたくさんあるけど、引用元も論文ではなく評論のようなものが多く、とにかくデータが出てこない。で第3章は「現代デザインの諸相」と題して、主観を述べ続けます。現代の諸相から自分が感じたことを散文としてまとめたいのか、客観的に分析して論じるのか、どっちがしたいのかつかめずに、読んでるほうがウロウロしてしまう。

アートの世界の人たちの文章は、感受性がとても繊細で、言葉選びも丁寧な人が多いなぁと感じることが多いんだけど、なにかを論じる文章になると力を失う人もいる。感じるままを素直に書くことから一歩先へ進もうとしたのに、自己流におちいっている人もいる。自分が1つのことから感じたことを一般化して、世界のすべてのことが説明できると錯覚してしまっている、と思う文章も多い。

この本、とくに第3章は、「現代の広告やデザイン」、「電子時代のデザイン」を俯瞰するものとして読むより、それらに接して著者が感じたものを読み取ろうとしたほうが面白い。

それにしてもデザインって何なんだ・・・。この世界に関する本はビジネス書と違ってとりとめがなくて、何冊読んでも全然わかんないよ。情報収集を続ければ少しは一般的な感覚が持てるようになるんだろうか。ならないんだろうか。まだまだ、どこから手をつければいいかもわからないような有様。一般化が得意そうなアングロサクソン系の人が書いた本でも探して読んでみるべきか・・・。