このマンガ家はかなり昔から知ってるけど、エロマンガを描いてる男性だと思ってた。当時流行の、スタイリッシュな感じの絵と、突き抜けた感じのやばいストーリーが印象的だった。そういうイメージがあったので、ちょっとチュウチョしてたけど、この人の本をとうとう買ってしまった。
「家族生活」って本は、ゲイの中年カップルが誘拐してきた女の子と一緒に、定住せずにずっと旅を続けている話。10年以上前に連載されたものだけど、完結してない。完結しなくても許されるマンガ家は江口寿史とこの人しか知らないので、きっと大したものなんだろう。で、「文芸」がやまだないと特集をやったときに、その未完の作品を全編収録したわけ。
感想:おもしろかった。私「私立探偵濱マイク」好きなんだけど、あれみたいなフィクション臭さがぷんぷんする。
この人は「好きな仕事しかしない」と公言している。不満たらたらの私の対極だ。彼女はロングインタビューで自作について語ったりはせずに、未完の作品をさらすことを選ぶ。彼女の妄想(マンガの中での)は、共感はしないけどなんとなくわかるところがある。
一緒に、いま連載中の「Beatitude」ってマンガの1巻も買って読みました。続き物なので完結してから感想を書くつもりだけど、なにかこの人の作品にはやさしすぎて、切ない気持ちを胸の中に抱えてるような人ばかり出てくる。相手を傷つけたくないから、決して爆発させることはない。「家族生活」の12歳の女の子は無邪気な子供を演じ続けるし、「Beatitude」のフジオは押し入れの天井に残酷な絵を描きつつ、人が来ると笑顔を作ってみせる。・・・私はけっこうすぐ爆発しては、周りの人たちを傷つけてきたような気がするな。
西洋占星術、四柱推命等の生年月日がものいう占いの場合、私とこの著者は同一に近い診断が下ることになる。なにかの占いで「若いころに好きなことをせずに我慢ばかりしてきた人は、中年期以降爆発します」と言われたのがずーっと頭の中に響いてるんだけど、私と彼女は我慢するポイントと好きにやるポイントが対極的な気がするんだ。
「ラマン」って本も買って読んだけど、これはちょっとアレなネタなんで感想は書きません。
以上。