この作家の日本語訳、3冊目。このシリーズは書き続けられてて、すでに日本語訳があと2冊出てるようですね。
これもまた、失意のうちに命を奪われた人の人生の物語でした。読んでる最中も、読み終わったあとも、残念な気持ちでいっぱいになるけど、なんというか、自分から見て遠い世界ではないというか、わびしいけど読まずにいられません。続いて2冊読むぞ…!
この作家の日本語訳、3冊目。このシリーズは書き続けられてて、すでに日本語訳があと2冊出てるようですね。
これもまた、失意のうちに命を奪われた人の人生の物語でした。読んでる最中も、読み終わったあとも、残念な気持ちでいっぱいになるけど、なんというか、自分から見て遠い世界ではないというか、わびしいけど読まずにいられません。続いて2冊読むぞ…!
これも「湿地」同様、陰鬱で愛と思いやりにあふれた人間たちのミステリー。とても力強い文章で、引きつけられてぐいぐい読みました。湿地のときは、犯人の時系列と操作の時系列を並列にした映画のほうが共感しやすいと書いたんだけど、この本は最初から並列で書かれていたので大いに共感しながら読んでしまった。ただ、最後の最後の種明かしは、若干あっけなくて、見つかった白骨死体以外の失踪者のことはやぶの中のまま。生き延びた母子の人生も多くを語られることはなく。なんとなく大味なのにやたらと繊細でもある不思議なアイスランド気質、なのかな。妖精や霊魂の存在をわりとみんな信じていて、人が生きていたのか死んでいたのかという、英米なら何より重視しそうな点にはそれほどこだわらない。
もっと翻訳されてるなら、他のも読んでみたいです。
寡聞にも知らなかった、北欧ホラー台頭のなかにアイスランドの作家もいることを。さらに、その代表的な作家の作品が映画化されてたことも。友人から聞いてさっそくこの映画を見てみたんだけど、映画の感想のなかに「小説のほうが良かった」という人が多かったので、順番が逆になってしまったけど原作も読んでみることにしました。
いくつかわかったこと。(ネタバレあります)
事件の鍵は遺伝性の疾患とレイプなんだけど、幼い女の子の死にまつわる最新の事件のことは小説では最後になるまで出てきません。映画では、刑事がレイプ犯が殺された事件の捜査を進めるのと並行して、それより数か月前に始まったその最新の事件が進行していきます。 むしろ、最新の事件の関係者の視点で映画は作られています。エンタメ性はこのほうが高いかもしれない。複数の時系列の事件が同時進行する映画って、すごくわかりづらいんだけど、関係なさそうに見えた複数の事件が一点に収束していくのがスリリングです。
ただ、この作品に関しては「遺伝」が最大のポイントなのに、映画では冒頭が遺伝子研究所だし、最初からヒントというより答が提示されてしまっている感じがあります。とはいえ、小説でもわりと早い段階から「遺伝」という語は出てくるので、小説のほうでももっと後まで取っておいてよかったんじゃないかと感じます。
それから、アイスランドの人名や地名は耳慣れないものが多く、口に出して発音することすら難しいので、映画で登場人物をビジュアルに把握するほうがわかりやすいかも。(ただ、ぱっと見似てる人も多いし、人間関係が複雑なのでやっぱり難しいんだけど)
ほかに、レイプ犯が映画だと3人がかりとしか取れないけど小説では単独犯であることが明白。そもそも、それがレイプだったのか合意だったのかも、映画ではいまひとつ明白ではありません。もしかしてこの辺は、原作に忠実に慎重に字幕をつけていたら、それだけで変わっていた部分かもしれません。
…でも読み終わってみて、ちょっと考えが変わりました。この作品の主人公は、その遺伝子を受け継いだ男であるべきだ。刑事を中心に描いてしまうと主人公は最後の最後に登場するだけになってしまうけど、謎解きよりこの不幸な男の一生に注目を集めるためには、彼は最初から登場しなければならない。映画化に当たっては、作品の再構成の苦労が必要だったんだな、と。
小説のほうが切なさがつのるけど、それは本人が登場する前からずっと彼は行間にいて、ビジュアルがない分、読者は彼に対するイメージを持ち続けられるからだ。
小説と映画って、メディアとしての特徴が違うから、場合によってはこういう風に再構成が必要になるのか、と、新しい発見がありました。
同じ作家の他の作品も、続けて読んでみようと思います。
図書館の新刊コーナーで見かけて借りてみました。
著者たちは、2010年に突然全社リモートオフィス化した、つまり全員が在宅勤務になったカプラン・テスト・プレップ社(https://www.kaptest.com/)の社員。世界じゅうがコロナ禍で在宅勤務になった今、先人としての彼らの経験が注目されるのは当然です。
この本は、一般社員の心得としてたとえば「毎日ちゃんとスケジュールをたてよう」「ビデオ会議があっても困らない服装をしよう」といった基本的なところから、マネージャーの心得として、リモートだとわかりづらい部分をどうやって補うかといったところを詳しく書いてあります。おもしろい。
この本は実際に悩みを抱えている人の励ましになると思います。借りちゃったけど、少なくともコロナ禍が去るまでは手元に置いて気になる章をちょくちょく読み直したりすると良さそうな本です。
なんか切実です。
日本の会社における外資系から来た人。家族を養っている人に対して一人で好きなように暮らしている人。いろんな「違い」が重なると攻撃が集まる。多数派の人たちが固まって気持ちよさそうに陰口を言う。重篤になると本人に面と向かって何か言い出しても自分がおかしいと気付かなくなる。
そういう「おかしさ」に気づけない人たちがいて、数が集まってくると上の人たちも外の人たちもそういうもんかと思うようになってくる。もうホラーです。命からがら逃げて来て、逃げられて本当によかった、生きててよかった、ということになります。
この本はきっと、ネットやリアルで無関係の人たちを攻撃し続けてる人たちが読んで気づいてくれたら…という気持ちで書かれたんじゃないかな。そういう人は被害者意識しかないから自分のこととして読まない、ということも認識しつつ。祈るように。
大きい目で見ると、人を攻撃する人は普段の生活に不満があるから攻撃対象を求めるので、ざっくりと「みんながもっと幸せになるといい」と思ってたけど、そういうものでもないのかな。
このテーマは「魔女狩り」「村八分」の昔から普遍的で重大なので、人間のメカニズムが少しでも明かされて、澱をぶつけられる人たちが救われる方法が見えてきたらいいと思います。