内橋克人「匠の時代第12巻 IBMの方法、ホンダの発想」66

海外経営戦略というのをテーマにペーパーを書こうとしているので、日本におけるIBMアメリカにおけるホンダの比較は「地元に、特にメンタルに受け入れられた」例として興味深い。・・・というコンセプトで検索してひっかかったので買ったんだけど、趣旨がぜんぜん違う本でした。1987年に夕刊フジに連載した企業ルポルタージュを文庫版としてまとめたものだそうです。目の付け所としては、日本の製造業の根性物語ではあるんだけど、基本的に「おもしろい読み物」です。以前読んだ「千年、働いてきました」にも似て、プロのライターがものづくりの現場の面白いところを抜き出してうまく再構成した文章です。で、IBMとホンダには何のつながりもありません。対照も比較もなし。ここは完全に計算違いだったけど、面白く読めたからいいか。 それに、IBMはちょうど椎名・ガースナー両もと社長の著書を読み終えたところで、ホンダは去年授業でかなり勉強した。インテルもそうだけど、同じ事実を違う人が語ると、まったく別の事実かと思うくらい、違うんだ。そういう意味でもこの本はプラスアルファになったと思います。時代がかなり古いというのも、かえって興味深い。今起こりつつあることを冷徹に分析するなんてこと凡人には不可能なんだから、みんな10年~20年くらい前の経営戦略を勉強すればいいのにね。 とりあげられているエピソードは、IBMは藤沢研究所でシステム360の国産化・マルチステーション5550(渥美清氏がCMに起用された、アレ)等、日本先行の開発を実現させようとするあたりが中心で、ホンダでは世界初の4輪駆動を思いつき、重要性を検討し、機構を作り上げて製造するところまでを取り上げています。 NEXと飛行機の中ですぐに読めて面白かったけど、もちっと学術的な論文はないかなぁ。