丸島儀一「知財、この人にきく」117

キヤノン特許部隊」も聞き書きの本ですが、あちらはどちらかというと「経験を語る」、こちらは中小企業に向けてアドバイスをする形になっています。

必ず言及するのが、”ライセンサーが倒産したときに、破産管財人がライセンスを拒むと、ライセンシーは無権利実施を行ったことになり、管財人に訴えられると製品回収、膨大な損害賠償をさせられる恐れがある”の話。USでもEUでもそういう場合のライセンシーの権利を守る法律があるけど、日本にはなく、破産法でやけに管財人ばかりが守られる。(「物権優先で無形の知財が後回しだ」)・・・で丸島氏が働きかけて、そういうのを避けるためにあらかじめライセンサーとライセンシーでライセンス関係を登録しておくことができる仕組みを作ったんだけど、許諾の範囲をきちきち記載しなければならないので、実効が薄いとな。

USのライセンス契約でよくある、「その他関連するもの全部カバーする」みたいな条項は、日本企業は嫌がるけど、この方が現実に即している・・・そうな。うちのライセンス先にも教えてやってくださいよ・・・・、おっと独り言です。

p38 職務発明の対価について、丸島氏の考えをまとめると、

1.会社のビジネスの中で知財というものが持つ効果を評価、知財がビジネス上もたらした利益を算定

2.各知財(たとえば1つの特許)の重要性から配分比率を決めて、1で算出した利益を配分する。

3.各知財について算出した利益について、今度は同様に発明者間の配分比率を決めて、利益を配分する。

となります。あくまでも「トータルでどれだけ事業に貢献したか」。

「日本の技術者はすごく地位が低くて損をしている」という概念がなぜかはびこっていて、金を取れると思ったら、事務の女の子や営業や、その他の人たちに助けてもらったことを全部忘れて、自分こそが利益を生み出したと思いこんでしまう、というケースがある気がする。私は研究者の平均給与を聞いて、高くて驚いたこともある。自分より給料が安い人が会社にどれくらいいるか、自分がその人たちの仕事を全部やれるかどうか、ちょっと考えてみるといいと思う。不満なら辞めるという手もあるし、上司にかけあってもいい。でも会社を訴えるってのはアメリカ人だってみんなやってるわけじゃないと思うよ。

p62 「産学連携は2極分割すべき。国として大事な将来の技術をやるのと、地方や中小企業の事業のサポートをやるの。」正しいと思うけど2つだけじゃなくてもっともっといろいろ考えていいと思う。

p64 標準化。昔はアナログの時代で、自分の技術が良ければ勝てた。今はデジタルの時代だから、世の中の技術の動きと連動しないと勝てない。中小企業にも関係があるので、国をあげて積極的になるべきだ。・・・私もそう思います。基本的に私が仕事を通じて思ったことと、この人が言うことは同じです。だから・・・ビル・ゲイツが楽隠居すると聞いたら早速相談をもちかける、韓国の大統領やヒュンタイみたいに、日本もいいところだけでも学ぶ姿勢が必要なんだよ。でも実際は固まって蔭口を言うばかりだ・・・そういうところには、うんざりしてます。もっとみんな外に出て行こうよ。敵に勝つためには敵を知らなきゃ。

・・・以上。