「千葉ロッテマリーンズ 変革の300日」127

私は元々野球に限らず、競技スポーツ全般にうとい。だから以前のマリーンズがどういう球団だったのか知らない。でも、プロ野球を観に行ったことがないわけじゃないんだ。だから、人があんまり入ってなくて盛り上がらない球場と、観客が心から楽しんでる球場の違いは、実感できる。

私が野球を観に行ったことのある球場は、西武球場横浜スタジアム西武球場では、ライオンズとイチローがいた頃のオリックス戦をみた。週末の昼間だったし、イチローがちゃんとホームランを打ったので、歓声を聞いた(ちょうど私たちは席を移動してて見損ねた!)けど、ポップコーンとビールくらいしか売ってなくて、試合直前に到着して、試合後もすぐ帰ったのを覚えてる。

横浜スタジアムに行ったのもかなり前だけど、たぶんもうベイスターズになってたはず。このときはさらに球場がガラガラだった。日本に滞在中のアメリカ人夫妻と一緒で、彼らが選手のサインを集めてた。外国から来た野球ファンだというと、意外と簡単にサインに応じてもらえると言っていて、実際いとも簡単にサインをもらって出てきて驚いたのを覚えてる。

日本の球場なんてそういうのが普通だったってこと。

一方、シアトルのSafeco Fieldsには3回行ったことがあるけど、全然違うのだ。初めて行ったときは自分でいい席を取って行ったら、あまりに席とフィールドが近くて、高さも同じで、びっくりした。それだけじゃなくて、球場には売店がたくさんあるし、観客はみんなマリナーズのシャツを着てるし、巨大な電光掲示板と巨大スピーカーから絶え間なくメンバー紹介や宣伝が流れていて、どこを見ても「さびしい一角」がない。コンサートホールよりもっと明るくて賑やか。ディズニーランドのアトラクションと売店を合わせたみたい。試合が始まると観客はうるさく騒ぐやつばっかりで迷惑なんだけど、でも楽しさはなくならない。みんな力いっぱい楽しみに来ていて、そこでもますますイチローはファンを常に意識して楽しませようとしてた。

という訳で、アメリカの球場と日本の球場はまったく別もので、日本のはぜんぜんつまらない、と思ってました。だから、この本を読んで私が思い浮かべたのはSafeco Fieldsなわけです。日本の盛り上がらない球場がSafeco Fieldsになった。・・・言うは易し、行うは難し。球団運営サイド、選手、ファン、その他関係者が一団となって前向きに楽しみながらがんばって、本当に楽しい野球体験が出来上がったということなのですね。

盛り上がってない一角がたくさんある会社が、みんなが本当に楽しめる会社に変わるという決意をする。まず変化後の会社を明確にイメージすることがかなり難しい。実現するための仕組みを作るのも難しい。実現させるのはもっと難しい。継続するのはさらに難しい。

やりとげた人たちの話を聞くと、その途中でくじけそうになる気持ちにエネルギーを注いでくれます。そういう意味で、読む人にポジティブな力を与えてくれる本です。