カレル・チャペック「絶対製造工場」383冊目

「ロボット(本のタイトルは「RUR」)」や「ダーシェンカ」、「山椒魚戦争」といった日本でも人気の作品を多数残したチェコの作家、カレル・チャペックの未読の小説をタイトル借りしました。

作家のフルネームを冠した吉祥寺の可愛い紅茶ショップやそのグッズが有名ですが、私とカレル・チャペックの出会いは、昔生物部のときに飼っていたサンショウウオ・・・という話は長くなるのでやめておきます。

この小説は、エンジンのようなものを開発していた時に、物質のエネルギーを極端に効率的に取り出せる装置を発明してしまった、というところから始まります。効率的すぎて、灰も残さずすべてをエネルギー化。物質の芯にある「絶対」、つまり汎神論でいうところの“神”ともいえる部分まで取り出してしまうので、この装置のある家の人はみんな陶酔状態。しかしそこからトラブルが起こり・・・。

“絶対”っていう言葉にはロマンがありますよね。絶対、絶対なんてないから。
こういう、歴史に残るほどの新語、今までに存在しなかった概念を創造する才能が天才的。
ただ、この小説はちょっと読みづらかったです。通りすがりの配達人が電報を届けるだけのくだりとか、議会の白熱した空疎な議論にまるまる1章使っていたりして、ストーリー構成上どうしても必要ではない描写が多い。楽しめるっちゃ楽しめるのですが、年を取ってくるとつい先を急ぎたくなってしまうのかもしれません。「山椒魚戦争」や「RUR」もそうだったかも。

チェコってどんな国なんだろう。不思議と自由なイマジネーションと、どこか堅いイメージがアンバランスで、興味が出てきました・・・。