紀藤正樹「マインド・コントロール」944冊目

カルトと呼ばれる団体に非常に詳しい紀藤弁護士が、「マインドコントロールってなあに?」という一般の人の疑問にやさしく丁寧に答える良書です。

(つまり、マインド・コントロールの地獄とか抜け出す苦しみみたいなディープなホラーエンタメ的なコンテンツを期待しても無駄です)

そういえば昔、無理やり団体に乗り込んでいって息子や娘をひっぺがして連れ戻す「奪回」のニュースとか聞いたことがあったけど、身体がどこにあるかじゃなくて、気持ちがどこにあるかが問題なので、「北風と太陽」方式で心を元のところに戻していく、執念深い地道な努力が必要なんですね。

人って、地味な真実よりおどろおどろしいデマのほうを信じる傾向があると思う。

それは、大きなものにくっついていれば安心できる本能かもしれないし、悪いもの(というウソを誰かが吹き込んだもの)から離れて少しでも身ぎれいでいれば安全でいられるという計算かもしれません。そして多分、人口の95%くらいの人が自然に、自分はどちらかというと被害者のほうだと思っている。マインドコントロールを解くことは、自分を疑い、仲間を失う苦しい工程だと思います。自分が信じていることは、本当に他者を害していないのか?これからも、ときどき立ち止まってわが身を振り返ってみなければ。と思うのでした。