およそ600ページに及ぶ大著。スタンフォード・ビジネス・スクールのバーゲルマン教授が、インテルの当時のCEOアンディ・グローブを講師として大学に呼んだ1988年以来、企業トップとの直接のやり取りに基づく企業研究をずっと重ね、2002年にそれを集大成として発表したのが、この本です。
アンディ・グローブ自身の書いた本をこれの前に読みましたが、そっちと同様、過去の自分たちの失敗の背景を思い切ってさらけ出しています。インテルってのは自虐的なのか?露出狂なのでは?という人が出てきそうなほどですが、個人的にはそこまでしないと分析なんて本当にはできないと思うので、サポーティブです。
学校の先生が書いたものなので、かなり難解。第1章と第12章は分析だけなので飛ばして、各章末尾の分析部分も飛ばして、最初は事実だけを時系列的な流れに沿って読むといいかも。第1章に書いてある論理(p11の3つの視点とか)はこの本の大切な部分ではあるんだけど、最後に読んだ方がわかる気もする。
翻訳は、インテルに長くいた人が監修してるんだけど、わかりにくい語も多いです。「独自能力」とか。いっそのこと原書を読んだ方が・・・とか思って買っても絶対読まないんだよね、、、。せめてこういう言葉だけでも原書で確認してみたいけど。
以下、あまりにもランダムな自分のためのメモです。読んでくれても、たぶんわかんないと思います。ごめんなさい:
P29 インテルの3つの時代とは
1.1968-85 メモリ企業(実質すでにマイクロプロセッサ企業になっていたと、本では繰り返し書いてあるが)
2.1985-98 マイクかんしゅうロプロセッサ企業(EPROMは91年まで継続、DRAMは85年に撤退)
3.1998~ インターネット関連企業。
P63 第2章。USでは会社が開発したのに使わない技術をもって独立する人が多いんだ。日本ではそういうの難しいのかな。
P106~ マイクロコントローラとマイクロプロセッサってどう違うんだろう。
P118 なるほど、わざわざコモディティと先端製品を共存させるのは、先端製品が急に売れたときに生産能力増強できるための予備だというのは、現実的な考え方かも。
第5章からCPUの話が出てきておもしろい。
しかし、(どのムーア?)ムーア=インテルがDRAMから撤退した後も、半導体団体で律儀に2年ないし3年で2倍という集積度の増加っていう法則というより目標を達成しようとがんばってるのは不思議だ。
ビジコンって言う、インテルに最初にプロセッサを委託した会社はすぐにつぶれたんだな・・。来週島正利の講演に行くのが楽しみだ。
P155 CPMのゲーリー・キルゲールはインテルにOSを売りにきたのにインテルは断ったんだ。IBMが買いに来たのに売らなかったのも同じ人だっけ?
P156 上級マネジメントがアイデアを通すための教訓。でもホンダのエアバッグを開発した小林先生は、3回ホンダアメリカの社長に懇願に行ってやっと受け入れられたらしい。
P159 「ゴードン・ムーアがベンチャーキャピタルをハゲタカ・ファンドと呼び、法務スタッフを急増させた」ふうん?
第6章 RISCのi860プロセッサにMSはNTを対応させた。→この辺が「闘うプログラマー」かな。またこの本読もうかしら。
P269 メンツァーが「プラグフェスト」を発明したんだ。
P271 はい、私の1994年か95年に買ったGatewayにはTritonチップが載ってます。
あちこちでMSとの軋轢?が書かれてるけど、いいパートナーシップを組んで一緒に盛り上げてきたって印象はないな。今はMSにもIntel Allianceチームってのがあるけど(AMDもだ)昔はどうだったんだろう。世の中ではWintelなんて言葉を使う人もいるけど、決して一致団結してたわけではない。とても重要なパートナー同士なので、もっと密にやったほうがいいんじゃない?とも思うけど、実はちゃんと組んでたんだろうか。よくわからない。
P365 オーバードライブプロセッサ、略してODP。私が1994年か5年に初めて秋葉原に行って、ロボットでPC9821に挿すODPとメルコのメモリを買って、富士通のインフォモザイクっていうブラウザを買って、接続するためのソフトもどっかでゲットして、インターネット接続を始めたんだった。Win3.1の時代。
P384 「プロシェア」ビデオ会議システム。MSが95年にライバルのH320をサポートすると表明した直後にコンソーシアムが解散・・とある。ふうむ?
P396 川上への進出って書いてあるけど、川下じゃないの?
(p415~ グローブがプロシェアを、売り方まで決めて命令したのは、JDCやMICに似てる・・・Tools Projectもそうだ)
しかし、テレビ電話もリビングルームPCも、インテルといいほかの会社といい、どうして同じ失敗を繰り返すのか。
第9章は、どの企業のどの事業部も必ず繰り返す失敗についてちゃんと検証していて重要。(先に読んだグローブの本は、思い返すとこの本に対する言い訳みたいだ!)
クリステンセンでインテルのセレロンについて書いた部分は、2冊目と3冊目に付箋を貼っておいた。彼がインテルに乞われて何度もコンサルに言った話は、2005年に行った経団連の講演で彼自身が言ってたものだった。
やっと気がついたこと。
経営の論理ってのは、誰かが書いた本を読んでいくら練習してもぜったい身につかないし、うまくいかない。論理ってのは自分で体験したり研究したりして身につくものだ。計算方法とか英語の文法とか歴史の暗記じゃなくて、バイオリンの弾き方とかテニスのやりかたと同じ。学校の勉強だけで成功した経営者はほとんどいないっていろんな人も言ってるし。
ただ、自分ですでに体験してうっすら認識してることがある人が、改めて本を読むことを通じてそれを太らせることができる。自信をつけたり、微調整したりすることができるんだな。たくさん経験すればするほど勉強が役立つけど、あまり遅いと学んだことを実践する機会が減る。この辺難しいね。