今枝由郎「ブータンに魅せられて」113

ゴールデンウィークだ!これから毎日最低2冊、たまりにたまった本を読むぞ。

本の中に「ブータンマニア」という言葉が出てきますが、私も一種のソレで、この本は新聞の書評欄で見てすぐにAmazonで買いました。Amazonで買うとブックカバーがついてこないので、本が微妙に汚れる気がするな。(別に買えばいいか)

そんな訳でブータンものの本は中尾佐助「秘境ブータン」から何から、手当たりしだいに読んでますが、去年第4大国王の王妃のひとりが自伝を出してたことは、この本を読むまで知りませんでした。ドルジェ・ワンモ・ワンチュック「幸福王国ブータン - 王妃が語る桃源郷の素顔」NHK出版だそうです。本買いすぎてるので、これはまず図書館で探すか。

この本で印象に残るのは、元国立図書館の館長で徳の高い高僧のロポン・ペマラという人と、第4代国王という二人の人物と、後者が提唱した「Gross National Hapiness」という考えであり、今枝氏はブータンの「人」について書きたかったんだな、と思った。

GNHについては、第4代国王自身、ことばが独り歩きしてる感があると語ってるそうです。経済基盤は必須だけど、経済発展が究極の目的ではない。ならば何が究極の目的かというと、GNH 言い換えるとむしろ「contentedness=充足感」と言うべきではないか、と。(p165-)たしかに、happinessという、どこかおめでたい言葉とcontentednessという静謐な言葉とは印象が違う。でも、GNPと対立するもっと大切なものを表す意味で、GNHというのは秀逸なコピーだとも思う。あまり否定すると、異なるもろもろのものを許容するブータン的ではなくなる。自分と違うすごいものに出会うと100%感化されてしまって、それ以外のものを否定しはじめるのがブータン人と日本人の違いだと思う。。。

もう一人の偉大なる人物ロポン・ペマラの印象的なエピソードを2つ。

「未だに須弥山の周りを日月、惑星が回るという仏教的宇宙観天動説の信奉者」であり「「時間」は1つしか」ないと思っている彼には、パリとブータンの5時間の時差が受け入れられず、ずっとブータン時間で過ごしたそうだ。あたまが悪いとかあたまが硬いのではなくて、あまりにも真摯に仏教の教えに一生を捧げていて、人生のすべての判断基準が仏教中心なのですね。その物差しを用いて極めて冷静に科学的に考えるのです。(p7-)

そんな彼がネイティブ・アメリカンの霊をなぐさめるというエピソードがあります。(p73-)

車に乗ってる途中で止めてもらって道端で読経を始めた。さまよっている霊を放っておけなかったというので、あとで調べたら、そこがかつて原住民虐殺が行われた地だった・・・という。宗教によいものとわるいものがあるかどうか、私にはわかりませんが、本物の宗教家とそうでない人ってのは、確かに違う気がします。

ところで。

ブータン鎖国を解いて以来、観光客は何をしてもホテル・ガイド・食事等コミコミの一律料金を支払うシステムになってることはよく知ってますが、そうなった由来は知らなかった。この本によると、第4代国王の戴冠式に国外から来賓を招いたとき、迎賓館や公用車を整えたけど、その後使い道がないので、来賓という形で観光客を限定的に受け入れるようになったのだそうだ。(p14 )

ああ、ブータン(風)料理が食べたくなってきたなぁ・・・。