半島から九州にわたってきた陶工の家族たちの物語。「百年佳約」というのは、末永く添い遂げようという朝鮮半島の言葉だそうです。
去年はなぜか西九州に3度も旅行したんですよ。熊本城、阿蘇、高千穂、そして有田。有田の「内山地区」には色とりどり、形もさまざま、技巧を凝らした陶磁器が店々に並んでいて、見惚れてしまった(散財もしてしまった)のを思い浮かべています。
あの素晴らしい陶磁器のなかには、この本で書かれたような渡来の人々が、カラフルでパワフルな生活と仕事のなかで生み出したものもあったのかな。
この本は「龍秘御天歌」の続編的作品らしい。読んだ記憶があるけど多分かなり昔で、読書ブログにも記録がありません。そっちは死の物語で、こっちは結婚の物語。「男女の愛憎の物語」じゃないところが面白い。好き嫌いは二の次、結婚は家と家でするものだから失礼のないよう、そして自分の家の繁栄を示すため、贅を尽くすし相手選びには慎重になる。好き嫌いがどうしてもこじれた場合の「解決策」が面白くてたまらないですよね、死者との結婚とか樹木との結婚とか。数々の怪異のうち何割かは、人間たちの集団妄想から生じたものではないかと私は思っているので、そうやって真剣に思いを込めているうちに樹木の精が生まれてしまって、人の娘と本当に恋に落ちたりしてるんじゃないか。実際の伝承を参考にした部分も多いのでしょうが、本作でも著者の空想(妄想?)の翼は素晴らしく遠くまで私を連れて行ってくれました。