大槻奈那・松川忠「本当にわかる債券と金利」525冊目

金融のことを勉強するようになって数年。債券って国債以外ほとんど未知の世界で訳が分からないので、借りて読んでみました。

難しい・・・ひとことで言うと難しい。というか、なんで難しいかというと、具体的に債券(新規発売する国債や地方債以外)を売ってるところを見る機会がないから難しく感じるのかもしれません。クーポンとか実質利率とか、複雑なのは確かだけど、株みたいに売ってるのをたくさん見られれば、少しはイメージがつかめるかもしれないけど、オンライン証券のサイトには、全部で10個も載ってない。全部、初心者が手を出すべきではない「BBB」の「劣後債」とかだったり。海外の情報サイトを見ても、見方がわからない。

そういう人は背伸びしないで、「債券中心に運用」っていう投資信託を買えばいいんだよな、きっと。

田坂広志「使える弁証法」524冊目

なんとなく、心理学を悪用して人を思い通りにする本みたいなタイトルだけど、「世の中で求められている商品やサービスは、一定の法則で移り変わっていく」ことを述べた真面目な本でした。

キーワードとしては「ニューミドルマン」…御用聞きがコンシェルジュへと進化。

テクノロジーの進化の対極にあるようなアナログなサービス。確実に進化していくんだけど、行き過ぎると必ず真逆のことが逆に求められるようになる。要はバランス。あっちに傾き、こっちに傾き、しながらだんだん上昇(あるいは前進)していく、だから現状や過去をよく観察していればこの後に何が来るかは容易に想像できる、等々。

薄い本で、かつ行間がスカスカなのでブログやウェブ記事1本で済む気もするけど、頭に入りにくい内容の場合、こうやって何度も何度も畳みかけてもらったほうが入りやすいので、さらっと読んでも残るという加減がちょうどいいのかもしれません。

 

 

及川卓也「ソフトウェア・ファースト」523冊目

日本でエンジニアといえば及川卓也です。DECはともかく(若い人はもう存在したことを知らない)、マイクロソフトGoogle錚々たる経歴を積んだ後に、組織や開発プロセスコンサルティングを主業に独立し、日本中のエンジニアたちに絶大な人気を誇る彼の近著。

で「ソフトウェア・ファースト」ってのは何かい、新しい極右政党かい?・・・じゃなくて、あらゆる仕事はソフトウェアを整備することで業務を効率化するだけでなく最適な形へ向かう、といった、ソフトウェアを中心に置いた仕事論、キャリア論、組織論でしょうか。ここまで来るともうMOTの教科書のようなひとつの学問世界が構築されつつあるようです。Google以降の彼の働き方は「プロフェッショナル」の放送内容くらいしか知らなかったので、マイクロソフト時代からうまく流れるようにキャリアパスができてたんだな、と改めて知ることが多かったです。

「ソフトウェア・ファーストと言いたくなるのは、彼がたまたまソフトウェアのエンジニアだからじゃないか?」という疑いの目で見る人はいるかもしれません。電機の営業職も土木設計者も銀行マンも、自分の仕事が世の中で一番大事だと思ってたりするものです。でも思うに及川さんは今の時代、ソフトウェアが仕事の頂点にあると気付いて、どこから入ったとしても(実際彼は新卒で営業職についています)、やがてはソフトウェア開発にたどり着いたんじゃないかという気もします。

この本が、一切の進歩をかたくなに拒絶しつづけている日本の会社に役立つかというと、そういう会社に何を説いても同じだろうな・・・。私は、EC企業に就職した親戚に送ることにします。エンジニアのキャリアの緒に就いたばかりの彼にとってこの本が、自分の将来のキャリアを考え始めるきっかけに、そして指針になることを祈っています・・・。

半藤一利・出口治明「世界史としての日本史」522冊目

感想をなんて書けばいいんだろう。

わずか250ページの新書で、世界史としての日本史を把握できるはずもなく、この本は「ネットやメディアから流れてくる断片的な情報をうのみにするな」「本を読め、勉強しろ、教養を磨け」「まず選挙に行ってないやつは行け」といった警鐘を鳴らすために書かれた本です。私自身、日本史もだけど世界史の知識がゼロに限りなく近いことをずっと恥ずかしく思っているけど、じゃあ今から本気でどこまでやるんだ?身に着くと思ってるのか、身に着けたところで私のような木っ端会社員がどうするんだ、立派な社長にでもなれると思ってるのか?としょんぼりしてしまいます。

でも、会社員の立場を捨てて、例えば明日から添乗員をやります!と思ったところで、外国から来る教養溢れる人たちに、日本の世界遺産をどのように説明できるのか。小さい世界で同じ人たちとだけ暮らしていくなら、学校で習った以上の勉強はしなくていいのかもしれないけど、私はいつも新しい刺激を求めるほうなので、何も知りませんというわけにはいかない。

この本には、読むべき本の長いリストもついてます。私の場合、まず日本史と世界史の教科書を読みなおすべきだと思うけど、そのあとでも先でも、少しずつ彼らの教えに従って本を読んでいこう、と思います・・。

Min Jin Lee「Pachinko」521冊目

今まで洋書は何冊買っても積みあがるだけだったんだけど、これは一気に読み通しました。韓国系アメリカ人の女性が、朝鮮半島から日本に渡ってきて暮らしている家族4代について書いた小説なのですが、アメリカではベストセラーになったそうです。

アイスランドで知り合った台湾人から教えてもらって知りました。英語だし知らない単語もたくさんあったけど、最後までなんとか。
韓国の人と前の職場ではいつも仕事してたし、韓国映画もたくさん見たけど、何代か前に日本に来た人たちがどんな経緯で来たのか?つらい話ばかり聞いて悲しくなることが多いけど、普段の生活に楽しいことはなかったのか?といった私の中の「missing link」を埋められそう、という興味で読み始めました。

最初は日本における半島の人たちの苦難の歴史を覚悟して読んでたけど、だんだん単に面白くなってきて、残り100ページくらいになってから、これはジェットコースター的エンタメ小説かなと思ったところもあったけど、華々しいフィナーレもなく終わりました。著者はあとがきで、かなり日本に取材に来たと書いてあるので、おそらくそれなりにリアリティがあるんじゃないでしょうか。当然、彼らをいじめる日本人が何人も出てくるけど、同じくらいの数だけ、偏見のない親切な日本人も出てきます。

唯一気になるのが、変な日本語の使い方だな。シリアスな場面で「soo, nee(そうねー)」と言ったり、高級レストランの店員が「irasshai(いらっしゃい)」とだけ声をかけてきたりするのが、割と気になる。大昔のハリウッド製日本ふう映画みたいにキッチュですが、この本が日本語訳されたり映画化されたりするときは、工夫して翻案してほしいなと思います・・・。

私と同様に異文化や人間に興味深々な人にお勧めします。そのうち日本語訳も出るらしい。

森晶麿「ホテル・モーリス」520冊

1時間半くらいのドラマくらいの重さ、かな。面白く読めたけどノリが、私はちょっと年を取りすぎてるかも・・・。

ホテルが舞台と聞くだけで、ちょっとわくわくします。非日常のときめき、初めて会う人たちにちょっと緊張しつつ、ちょっと背伸びして接する感じ・・・。

ストーリー的には無理がいっぱいあるけど、つじつまを合わせるより楽しさに振り切った感じ。娯楽なんだからいいんじゃないかな?

モーリー・ロバートソン「悪くあれ!~窒息ニッポン、自由に生きる思考法」519冊目

いつも「所さん!大変ですよ!」で見ている、いまは好々爺ふうのモーリー・ロバートソン。アングラ好きな友達は彼のことを崇拝していて、そのギャップが埋められなかったので、一回彼の著書を読んでみようと思いました。

すご~く易しいことばで書かれた、本を読んだこともない”意識低い”?日本人を啓蒙する趣旨の本でした。書いてあることはだいたい共感するけど、この本を読むに至った人は易しすぎると思うだろうし、この本を読んだほうがいい人は結局一生読まないんだろうなぁ。共感しない部分は、大麻合法化ってのがやったことがない私には全然わからないってことと、やったことがあったとしても、コーヒーはいいとかタバコはいいとか、嗜好品はいくら勧められても自分がいいと思わないとやらないだろうからな。

しかし、こんなに易しい言葉で日本人を啓蒙してくれる彼はとても優しい人だと思う。完全に日本人でも完全にアメリカ人でもなく、どっちの社会でもイジワルされて嫌~な思いをしたのに、奴らをほったらかしにしないで助けに戻ってきてくれてるんだから。

ひるがえって自分を顧たときに、少しはまともな大人になれたんだろうか。旅行するようになったのは本当に最近のことだし、なんだかんだ言って私が戻るところは近くに温泉のある田舎の小さい家か何か、とってもスケールの小さいところなんじゃないかという気もしてます。

自分が「ひとかどの人間」なのかどうかって、みんなどうやって判断してるんだろう。私が自分をひとかどだと思えないのは自己肯定感がまだ低いからか、それともまだダメだからか・・・。まあいいか。こんなこと考えても意味ないですね。

とりあえず、自分はちゃんと自分として生きられているか、自問しろというのがこの趣旨でもあるなら、それくらいはできてるかな。体が動くうちに動かしておこうと思えるのはそろそろ最後だから、もうちょっと思い切り出かけてみよう。