日本でエンジニアといえば及川卓也です。DECはともかく(若い人はもう存在したことを知らない)、マイクロソフト、Googleと錚々たる経歴を積んだ後に、組織や開発プロセスのコンサルティングを主業に独立し、日本中のエンジニアたちに絶大な人気を誇る彼の近著。
で「ソフトウェア・ファースト」ってのは何かい、新しい極右政党かい?・・・じゃなくて、あらゆる仕事はソフトウェアを整備することで業務を効率化するだけでなく最適な形へ向かう、といった、ソフトウェアを中心に置いた仕事論、キャリア論、組織論でしょうか。ここまで来るともうMOTの教科書のようなひとつの学問世界が構築されつつあるようです。Google以降の彼の働き方は「プロフェッショナル」の放送内容くらいしか知らなかったので、マイクロソフト時代からうまく流れるようにキャリアパスができてたんだな、と改めて知ることが多かったです。
「ソフトウェア・ファーストと言いたくなるのは、彼がたまたまソフトウェアのエンジニアだからじゃないか?」という疑いの目で見る人はいるかもしれません。電機の営業職も土木設計者も銀行マンも、自分の仕事が世の中で一番大事だと思ってたりするものです。でも思うに及川さんは今の時代、ソフトウェアが仕事の頂点にあると気付いて、どこから入ったとしても(実際彼は新卒で営業職についています)、やがてはソフトウェア開発にたどり着いたんじゃないかという気もします。
この本が、一切の進歩をかたくなに拒絶しつづけている日本の会社に役立つかというと、そういう会社に何を説いても同じだろうな・・・。私は、EC企業に就職した親戚に送ることにします。エンジニアのキャリアの緒に就いたばかりの彼にとってこの本が、自分の将来のキャリアを考え始めるきっかけに、そして指針になることを祈っています・・・。