三澤一文「なぜ日本車は世界最強なのか」

新書版でおよそ200ページの本ですが、読むのにけっこう時間がかかりました。なんでこう読み進めないんだろう?

たとえばね。

p174

「日本企業では、今、社内に小粒システムが増えすぎて問題になっているところが多い。低コストで経営者の理解を得やすいのはよいのだが、それらの大部分は、もともとたいした成果が期待できず、結果として導入されても活用されない。そのようなシステムが企業のIT全体の件数ベースでみれば80%を占めるケースさえある。これらをITのライフサイクル・マネジメントの視点で管理すれば、確実に無駄なIT投資が防げる。」

ってあるのですが、「小粒システム」の定義は文中に出てきません。「小粒システム」が「低コスト」であるという事実や何をもって低コストというかという説明もない。なぜ「低コストだと経営者の理解を得やすい」のかも、なんとなくわかるようで、書いてないのでわからない。「小粒システム」の「大部分」とはどれくらいか、5割か6割か、8割か9割か。「たいした成果」とはどの程度の成果か、実は何の成果もあがらないと示唆質得るのか。・・・と、ここまで裏づけを欠いた表現が続いた後で小粒システムの投資が企業のIT投資件数の「80%を占める」と急に数字をあげられても、前提がまったく書かれていないので、どう理解すればいいのか、そろそろ途方にくれてしまう。そして、ITの「ライフサイクル・マネジメント」もその「視点」の定義もわからないまま、結論で「確実に」無駄なIT投資が防げる、と断定的。

読み終えて思うに、多分すべてちゃんとした調査や経験に基づいてるんだと思う。ひとの言うことを疑わない人なら、あるいは著者を元々知っていて信頼している人なら、この本の表面だけ読んで納得できるのかもしれないけど、私はまだだめだわ・・・。もしかしたら本当に表面的なことだけなのかもしれないけど、もっと地道な泥臭い文章の方が馴染むというか・・・。

内容についてコメントするほど、私はまだこの本の意図が理解できてませんが、面白いと思った部分は以下のとおり:

p50「米国の無策に助けられた日本」では、一般にUSの会社はマーケティングが上手だと言われているけれど、実は逆だと指摘しています。日本がコツコツと良いモノ作りに励んできた間、USの会社は小手先のマーケティング手法に終始し、正しい分析を怠った結果、顧客の心をつかむことができず、USの自動車会社は軒並み衰退してしまった、といいます。それはその通りだなぁと思いました。

p146、イノベーションがなかなか日本で育たないことに関連して、ピアニストの中村紘子さんの言葉を引いています。

日本でクリエイティビティが育たない理由は「音楽学校の先生の質が悪い」と言い切ります。大量生産された音楽学校の先生が、よいものと悪いものを区別できないから、自分が習ったそのままを生徒に求める。だから先生を超える生徒が現れない。・・・痛いほどその通りです。お察しの通り、これは音楽だけの問題ではありません。

今日のところは、この辺で。