うっすーい本(197ページ)なので、早起きしてあっという間に読了。
丸島氏は著者じゃなくて、インタビュアーによる聞き書き。テクノロジーや用語に関する注釈も説明も何もなくて、雑誌記事を読み流しているような印象。これを300ページくらいにしっかり膨らませた本が読んでみたいです。
キヤノン、それは、字を書くときに「ヤ」を小さくしないよう、いつも心の中で「き-や-の-ん」って呼んでるんだけど、絶対にそう発音してはいけない会社(特にこの会社の人の前では)。そして、今までにも何度も契約交渉で苦労した会社。(そっちが二番目かよ)
感想:
日本最強の知財戦略をもつ会社と言われてるけど、アメリカの会社みたいだ。日本的だと感じたところは、土日も働いて残業してとにかく働き続けた・・・というくだりくらい。
ただ、アメリカの会社の中には、(HPみたいな)一貫した強い知財戦略を持つ会社もあるけど、場当たり的な交渉をしがちな会社も多い。日本の会社の強みは、継続する強さとか、一致団結できるパワーとか、トップダウンの指示に実効性があるところとかじゃないだろうか。当然だけど、一貫している方が絶対強いんだから。
メモ:
p41 独自のコピー機を自社技術だけで作り上げたキヤノンを、先行者ゼロックスが訪問するくだり。
NDAを送っておいたのにサインして来ない。Non-NDA Discussionをしようと言っておきながら、あの手この手を使って重要な事項を聞き出そうとする。「随分余計なことをしゃべらされてしまいました」。なるほど。
p81最近の、企業が特許をライセンスとしてどんどん外部に許諾している風潮について。「では自分たちの事業をどうやって守るのか」。「自分の財産を人に与えるということは、取引の材料を失うことになるのです。」ここでいう取引とは、訴えたり訴えられたりした場合のことです。なにを自社の財産(コアコンピタンス)と考えるかによるわけだけど、ハードウェア中心の会社とソフトウェアやサービス中心の会社とは違うかもしれない??・・・これは簡単に結論は出ないな。
p98 「80年代に入ってからは、名だたる世界企業とクロスライセンスやOEM契約を結び」・・・キヤノンは、NAP条項を受け入れずに某OSのOEM契約を締結しなかったことで有名?な会社だけど、それまではPCを出していたこともあるんだから、一度はサインしたんだろうか。
p99 天下りがいないらしい。うん、この会社は日本企業だけど日本的な部分を排除してあるのだ。他の日本企業がこぞってキヤノンに追従しようとしてるんだとすれば、自己否定っぽい気がする・・・。
p121 ハネウェルから日本の会社が一斉に訴えられたときに、自分たちだけは定型契約を自分有利に修正しておいたので比較的軽症で済んだらしい。なるほど、こういうことを経験してるから、定型のままサインさせようとするアメリカの会社が信用してもらえないのだな。うちは訴えたりしないのに。しょっちゅう訴訟やってるけど、うちが訴えられたのばっかじゃん・・・早く気づいてくれよ。
p184 後半丸島氏は、今後の日本の知財戦略を次々と提案する。
2002年の時点で書かれた知財高裁はもう発足した。しかし、特許無効の判断を、特許庁と裁判所が完全にひとつになって行うってのは、司法と行政の一体化になっちゃうので、こういうことは本当に用心してやるべきだと思うなぁ。