震災後誰かのすすめで買って、読めないままになっていた本をやっと読みました。
今年の夏休みは前半は自宅、後半に帰省予定なので、久々に時間ができたので。
さてこの本、かなり広くネットで取り上げられたりしたので読んだ人も多いと思います。的確に福島の原発事故の規模やとるべき対策を予言していたのに、どうしてこの通りの対応ができなかったのか?という議論を呼んでいました。
確かにそうなんだけど、一般大衆である私には、この本が分析に基づいた科学的な本だということがわかるくらいで、自分が原子力発電所のそばに住んでいたとしてもこの本を読んだだけでは右往左往するだけだと思いました。原子力のリスクと、防災の重要性を説いた専門書であり、住民/一般市民レベルの防災対策はもうすこし噛み砕いたレベルの訓練が必要だということは、この本の中でも指摘されています。ざっと一読したレベルの私の知識はひじょうに薄いものですが、「予想できないことが起こることを前提に、なにかが起こったときは最大限の事故を想定して行動をとるべき」ということだけはわかりました。たとえば首相官邸のすべての人たちが事前にこの本を読んでいたら、リスクに対する感覚がすこし鋭くなっていた、のかもしれません。
原子力は、人類が火を持ったことに匹敵する諸刃の剣だといいます。正しく扱えないなら放棄すべき、という考え方は正しい。でも、放棄すると決めても、すでに放出された放射能の影響の大きさは、感情的にならずに正確に分析して対処しなきゃ,とも思います。
事故当時のえらいひとたちをtwitterで弾劾していい気分になる、みたいことだけはしたくないものです。科学が苦手な人は、できる限り正確なデータと、それを正しく扱える人たちを探して話を聞いた方がいい。この著者は、そういう意味で話を聞くべき人の一人なのではないかと思います。
こういう人に、福島の事故後私たちがどうすべきかを書いてほしいのですが、探しても見つかりません。
ちょっとした談話なら見つかるのですが…http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20120423ddm010040027000c.html
しかし、原子力は化学だから被害の規模が正確に予想できるのに、しなかったことは人災以外のなにものでもない、という著者としては、これ以上書きたいことは何もないのかもしれません。