デービッド・アトキンソン「世界一訪れたい日本のつくりかた」536冊目

なるほど、これがIR計画の出どころか…。

これを機に過去のこの人の本の感想を見直してみたら、「よく言ってくれた!」と強く共感する一方で、「人はそう簡単に変わらないよー」「日本のこじんまりした宿にも、至れり尽くせりのいい宿があるのにー」など否定的?なことも書いていました。ここまで5冊読むと、以前の本で語り切れなかった彼の考えも見えてきて、今は納得できるように思います。

日本のいい宿ランキングで上位を占めるのは、私も知らない宿ばかりだった。有名な大ホテルではないけど、しっかりサービスしているところがちゃんと外国からのお客さんに受け止められてたみたい。日本の将来(の歳入)を救うために、生まれる子供を増やすことはあきらめて、移民も無理だと考えて、観光収入に狙いを定めたのは合っている気もするけど、「ほかにはないのか?」という点を検討した形跡はないので、もしかしたら観光でなくてもよいのかもしれません。彼は分析のプロだけどストラテジストでもプランナーでもない。

そして、観光の中で「富裕層を狙う」のは賛成。まずパイオニアになりたい富裕層を誘致して、観光地のステータスを上げれば、それよりちょっと安い施設もどんどん建って行って、人がたくさん行くようになって、観光地が盛り上がるという仕組み。確実にお金を落とす人を連れてきて、まずその人たちのお金で観光地を整備する。正しい。

それはカジノでなければならないのか?できれば避けたいとみんな思ってるけど、そうしないとならないほど日本の状況はひっ迫してるってことなのかも、少なくとも彼の考えでは。「IR」って例えばどういうものだろうと思ってたけど、彼が例に引いたのはシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズだった。この間ちょうど行ってきたんだけど、ホテルが大きくて立派なだけじゃなくて有料の植物園があったり、ショッピングモールもお手頃なフードコートもあったりして、あらゆる階層の人がみんな恩恵にあずかれるような施設でした。ホテルも、高級ではあるけどバカ高いわけじゃないらしい。確かに地下にカジノもあったけど、これなら日本に作ってもらってもそれほど問題はないような気もします。

既存の観光地の整備については、いちいちごもっともでした。事前知識ゼロで来てくれる人たちのことを、今まではちっとも考えてこなかったから、もっとよくわかる看板、詳しいパンフレットを、ネイティブの監修を入れて作れと。日本人の私が行ってもわからないことだらけなので、そうだろうなと思います。もしも彼の考える観光地整備を事業化するなら、雇うべきは「ネイティブのライター」で、日本側は情報を提供するにとどめるのがベストといいます。海外のYouTubersにも、彼らを束ねている事務所とかあるのかな。難しそうだけど、わかりやすく親切に整備された美しい観光地にたくさん人が来てくれて、感動して帰ってくれたらいいな…。