木村友祐「海猫ツリーハウス」605冊目

ものすごく可愛いフェルトの子ペンギンの表紙。これがホラーとか全員死ぬミステリーとかだったら怒ります。そうではなかったけど、この表紙の意味はなんだろう。主人公が釣りをしていたときに現れた海鳥の子?それとも、専門学校を中退して田舎で暮らす主人公のまだ幼い部分を表してるのか?

この作家の「幼子の聖戦」という本を読んだらとても読後感が悪く(そういう小説なんです)、作者まで嫌な奴なのかと思いそうになったんだけど、そこまで読者の気持ちを動かすからには、なかなかの筆力なのではないかと、デビュー作のこの本を読んでみたわけです。

実際、この本の主人公はとても未熟でウダウダしているんだけど、それを描き切る力が感じられます。デビュー作から「幼子」まで、作者が描きたいテーマには共感できるようで希望がなさすぎるんだけど、読ませます。でもやっぱり、マジックが…欲しいんですよね。読んでよかった、自分の中で何かが変わった、と、勘違いでもいいから思いたい、という部分が人にはある。テレビドラマみたいな勧善懲悪でなくても、何かもっと心を動かしてほしい。この辺は、売れるかどうかというポイントになってくるのかもしれません。作品の素晴らしさとは別の観点。

もうしばらくしたら、また読んでみたいです。

海猫ツリーハウス (集英社文芸単行本)

海猫ツリーハウス (集英社文芸単行本)