ブレイディみかこ「スープとあめだま」976冊目

ブレイディみかこが幼い子ども(といっても小学生中高学年くらいから?)に向けて書いた絵本。絵は「ぼくはホワイトでイエローで、ちょっとブルー」の表紙と同じ、多感できれいな目をした少年の絵。

この子がある雪の日、母親に連れられてホームレスをシェルターに案内し、そこで違和感の中から共感を見出すという、短い時間を描いた薄い絵本なので、著者の本をたくさん読んでいる大人には小さく感じられるだろうな。この絵本を読んでほしい人をイメージするのは少し難しいけど、(なぜなら、本を見るより実際にボランティアの場に連れて行く方が、この少年のように自分で発見する機会があるから)、そう簡単にボランティアに行けない人には入口としていいのかもしれない。

私は、この本にちょっと共感したところがあった。

自分が以前行ってた「傾聴カフェ」で、私はお客さんのオーダーを取ったり飲み物を運んだり、手が空いたら話し相手になったりしていたんだけど、そんな私にお客さんが「あんたもこれでコーヒー飲むといい」ってお金を渡してくれたおばあちゃんがいた。生活保護のお金を切り詰めてここに来ているのに、手伝っている人のことまで考えてくれるなんて・・・と、ちょっと泣きそうになりながら飲んだコーヒーは染みるように美味しかった。「気の毒な人」ではなくて、「一緒にコーヒーを飲んだ人」になった。

人に何かを与えるつもりでいても、逆に与えられることは多い。一緒に過ごす時間が長くなれば、立場と関係なく仲間意識が育ってくる。そういうことが大事なんだと思う。なるべくいろいろな人と話をしたり、ご飯を食べたり、歌を歌ったり、ダンスを踊ったり、風呂に浸かったりする。コロナ禍の災いはそういうことが一切できなくなったことだよな。でも、そういうことの大事さを思い知ったことだけは、よかったのかも。多くの人が思い出してくれるといいな・・・。