佐藤正午「小説の読み書き」628冊目

佐藤正午の本は全部読んでるし持ってる上に、ときどき読み返す。そんな作家はこの人しかいないのだ。なるべく全部読む作家は他にもいるけど、借りるか、買ってもすぐ売るので手元に残らない。というわけで佐藤正午の本はいつでも読み返せる。

1章毎に1人の作家を取り上げて、その文体や表現を著者なりに分析する本で、前に読んだときは「小説界で文章の巧と呼ばれてる人の本だから、分析も鋭いのに違いない」と思い込んでうやうやしく読んだ。前も今も、取り上げられてる作家の本はほとんど読んだことがない。でも、2009年に最初にこの本を読んでから11年も経つと私はだいぶ図太いおばさんになっていて、「佐藤正午はこう言ってるけど、大昔の作家はそんな文体なんか頓着しないで気分のままに書いてたんじゃないかな」と思うようになった。昔は編集者があまり「てにをは」を直したりしなかったのかもな、とか。大作家の文章にはおかしなところにもすべて意味がある、と言いたがるのは著者が几帳面だからなのかな?

大作家たちに常に敬意を表してるように見える著者自身、何度かあとで「連載のときにこう書いたけど間違ってました」という追記をしたりしている。私から見れば、取り上げられてる大作家たちも佐藤正午も同じような高さにいるので、大作家の人たちもいっぱい間違いをしたんだろうと思ってる。

文章がうまくなりたいなーと思って読み返してみたんだけど、それより何より、書きたいことを特定して、あとは書いて書いて書きまくって、推敲して推敲して推敲しまくるのが、文章が上達する秘訣なんだろうなと、当たり前のようなことを痛感しました。

小説の読み書き (岩波新書)

小説の読み書き (岩波新書)

  • 作者:佐藤 正午
  • 発売日: 2006/06/20
  • メディア: 新書