私が好きな作家として挙げる村田喜代子、佐藤正午、松下竜一という3人は全員九州の人だ。なかでも松下竜一は西日本新聞の短歌の投稿欄で頭角を現した人なので、きっと彼のことが書いてあるに違いないと思って借りてみたら、案の定取り上げられていました、3人とも。
この本のもとになった新聞連載が2004~2006年。2000年代の九州は、「地方の時代」というお題目と裏腹な人口の減少、文化の衰退を売れいていた時期だったので、この本(本自体は去年出たばかり)もちょっと悲観的な調子なのですが、コロナで一気に首都圏集中が崩れた今、改めて読まれるべき本じゃないかなと感じます。
読み始めてすぐに気づいたのは、記名記事として書かれた個々の文章の素晴らしさ。学生の頃に読んだ小林秀雄を思い出してしまった。元来、新聞社の社員たちにはこのくらいの技量があったんじゃないのかな。長い間、新聞記事もネット記事も、論説もブログも、調査が十分じゃないという以前に、書き手の芯が感じられず、「人に自分を主張するために書いてる」だけのように見えるものばかりと思っていました。本当に久しぶりに、書いている人の力をこめた文章が詰め込まれた本に出合えて、読むことの喜びを味わっています。
そして当然、記事で紹介されている本も次々と読みたくなってきます。2週間の期限では全然読み進められず、1週間延長してもまだ最初の10冊分くらいしか読めていないので、この本は買います。手元においてじっくり読んでいきたい。
読んでるうちに、故郷である九州に戻ってまた暮らしてみたいと思えてきました。読み捨てられるものを書き続けて、たくさんお金を稼がないと暮らしていけない都会とは違う、時間の流れとお金の流れが、田舎に行けばあります。まだ体が動く50代のうちに、やりたいことをやろうと思って(勝手に)早期退職したので、せっかくの自由をもっと有効に使えるんじゃないか…。
そんなことを考えながら、本が届いたら「14 忘れられた日本人」からまた読み進めます。
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