沼畑直樹「最小限主義。」666冊目

思い出も愛着も、基本的に「人には何も必要ない」と決めてしまえば、ポイポイ捨てられれう気がしてくる。私は実家を引き払ってきていて、生まれたときからの荷物を全部持ち歩いている。アルバムも絵も文集も、愛読書もCDも。レコードやカセットテープまである。レコードとカセットテープは少なくともここに引っ越してきてから一度も聴いてないので、明らかに不要なんだけど、いつまでたっても悩み続けている。

本やCDはどんどん増えるのでどんどん売ったり捨てたりしてるけど、そのあとで探すことも多い。「あ、ない。捨てたんだっけ」と思うときちょっと寂しい。でも図書館やオンラインで再び出会えないものは少ない。処分した後で買い直したものもある。でも、たぶんそのくらいでちょうどいいのだ。

著者はいま吉祥寺の中道通り(私もその辺に住んでた)の日当たりのいい小さな中古マンションに住んでいるらしい。なにもないスペースと空があればいい。空が見えることが一番大事。「好きなもので固めないほうが外に出やすくなる」。

ただ、もう少し彼の今の生活に密着した本かなと勝手に予想していたので、「彼の考えるミニマリズムとは」という部分が思ったより多かった。

彼のサイト https://minimalism.jp/ を見ても共感するところ多いな。私の部屋は狭いけど(前に住んでたところより)明るくて、北と西から光と風がたっぷり入る。窓を少しずつ開けて、近くの高速道路を車が走る音を聴きながら、ただぼーっと猫をひざに載せているときは至福。神様ありがとう、と言いたくなるくらい幸せを感じる。猫と私がご飯を食べられれば、他には何もいらない気がしてくる。これをできれば物価の安い田舎でやりたいんだよな…。わたしの移住計画は、もうしばらく続く‥‥。