高野秀行x清水克行「辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦」674冊目

高野秀行の辺境書を何冊か読んだ流れで、これも読んでみました。

急にハードル上がったかな。歴史をまるきり全然勉強してこなかった、受験科目からも外した私には、出てくる日本史上の話にまったくついていけません。でもすごく面白い。辺境を目指す人たちは、追いやられた可哀そうな人たちなのではなくて、国とか政府から離れて自由に暮らしたかった人たちである、とか。先日「ノマドランド」を見てきたばかりで、あの映画に出てくる人たちも貧しくて社会から置いてかれた人たちとも言えるけど、帰っておいでと言ってくれる家族がいてもあえていつかずに旅を続ける人も多い。むしろ、年をとっていろんなしばらみから逃れてやっと望む自由を手に入れたという感じも受けました。今この時代にそういうノマドがたくさんいるのに、何世紀か前のこの世界に、そういう人たちがいなかったと考えるほうが不自然なのです。

というのは最初の本「ゾミア」についてのコメントで、この本ではその後も合計8冊の奇書(であり名著)が紹介されます。面白いのは、対談の中に相手の発言に対する「受け」「反応」がほとんどないこと。「へぇそうなんですか」「知らなかったなぁ」「驚きました」等々。特に高野さん、相槌ひとつうたない(笑)(文字数が多くなるから切り捨てただけかな?)。物知りで好奇心旺盛な二人が、勝手に言いたいことを言い合っている。教訓も結論もない(当たり前だけど)。この本を読んでる者は、最初から最後まで、中に入れてもらってないような感覚がありますが、あまりの奇矯な世界なので、多分みんな何冊か読んでみたくなると思います。かつ、特別に自分の琴線に触れる本がどれか、という点で、読む人の志向が明らかになってしまうという、恐ろしい本でもあります(ほんとか)。